経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. ビジネス

アマゾンが置き配に本格対応。世の中どう変わる?(前編)

 ネット通販のアマゾンジャパンが、「置き配」に本格的に乗り出しています。置き配は実際に使った人を中心に絶賛する声が上がっていますが、一方で盗難や紛失を心配する人などを中心に、否定的な意見も多いようです。
 しかしながら、置き配は、手渡しの配達方法と比較して、圧倒的に効率がよく、広く普及した場合、通販のビジネス環境を一変させる可能性があります。

 筆者は置き配をうまく利用する人としない人で、一種の格差が生じる可能性すらあると考えています。この意見に対しては「何言っているの?」「意味不明」といった批判の声も多くいただくのですが、けっして大げさな話ではありません。

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6つの場所から荷物を置く場所を選択

 置き配は、配達員が荷物を指定場所において配達終了とするもので、米国などではよく見かける手法です。受取人が在宅している必要がありませんから、再配達問題の有力な解決策になるといわれています。利用している人からは「あまりにも便利」などと絶賛する声が上がっています。

 一方で、荷物の紛失や不在が周囲に分かってしまうリスク、雨に濡れやすいことなどから置き配を嫌っている人もいます。アマゾンでは、置き配ができる地域の人は、置き配か手渡しを選択できるようになっており、一旦設定すると、置き配が標準配達方法に設定されます(望まなければ置き配を設定しなければ大丈夫です)。

 配達員が荷物を置く場所は、玄関の前、宅配ボックス、ガスのメーターボックス、自転車のカゴ、車庫、建物内受付という6つから選択できます。置き配設定にしていると、配達員はインターホンを鳴らさず、そのまま商品を置いて配達終了となります。万が一、商品がなくなるといった事態が発生した場合には、アマゾンがヒアリングした上で、商品の再送などに対応するそうです。

日本は治安が世界一よいはずなのに盗難を心配する声が多い

 筆者は置き配をフル活用していますが、あまりにも便利で、生活が一変したといっても過言ではありません。配達側も基本的に再配達がなくなるわけですから、圧倒的に生産性が向上する結果となるでしょう。

 近年、日本では再配達が社会問題にもなり、顧客は事業者に過剰なサービスを要求すべきではないとの声で溢れています。もし、そうであるならば、置き配は、事業者、利用者ともにメリットがある仕組みであり、全員が賛同してもよさそうですが、どうもそうではないようです。

 一部の人は、荷物が盗難される可能性や、(荷物が置いてあることで)不在であることを周囲に知らせてしまうリスクについて強い懸念を示しており、置き配の普及を快く思っていないようです。多くの日本人は「日本は世界でもっとも治安がよい国だ」として自画自賛していますが、それほど治安がよいのなら、盗難など気にしなくてもよいはずですが、どういうわけか、周囲は犯罪者ばかりと考えているようです。

 そうなってくると、置き配を徹底的に利用する人としない人がくっきりと別れてくる可能性があります。もし置き配に対する意識に大きな分断が発生すると、どのようなことが起こるでしょうか(次回に続く)。

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