米国で発生している長短金利の逆転現象は何を意味している?

 米国の債券市場で、10年債の金利よりも2年債の金利が高くなるという、いわゆる「長短金利の逆転現象」が発生しています。
 過去の事例では、金利の逆転が発生すると、景気後退に陥ることが多く、市場関係者がざわついていますが、長短金利の逆転は本当のところ何を意味しているのでしょうか。

景気見通しにバラツキが生じると発生する

 一般的に長期の金利は短期よりも高いというのが常識となっています。長期の場合、不確実性によるリスクが高まりますから、その分だけリスクプレミアムが上乗せされるというのが主な理由です(長期金利と短期金利など、金利については「加谷珪一の金利教室」を参照してください)。

 では、なぜ長期と短期で金利が逆転することがあり得るのでしょうか。

 その主な原因は、足元の景気と将来予測の乖離です。通常、足元で景気がよくなると、将来も景気がよいとだろうとの予想が成立します。そのため、長期の金利は短期よりもさらに高くなります。しかし、足元で景気が過熱しており、金利が高めに推移しているにもかかわらず、一部の投資が長期的には景気がスローダウンすると考えると、長期国債の購入が加速します。

 そうなると、短期の金利は高いのに、長期の金利が低下するという逆転現象が生じることになります。

 つまり、今後の景気見通しに関する、市場の見解が分かれているということですから、場合によっては、景気後退の予兆となるわけです。米国でも過去、何回かそのような出来事がありましたし、日本でも80年代のバブル崩壊直前には、長短金利の逆転現象が発生していました。

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重要なサインではあるが、何事もなく解消されてしまう可能性もある

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、これまで利上げモードとなっており、短期金利もそれに準じて上昇してきましたが、一部の投資家が米中貿易戦争によって世界経済が悪化することを懸念し、長期国債を積極的に購入し始めています。

 またトランプ大統領がFRBに対して執拗に利下げを迫っていたことも、国債購入に拍車をかけた面があるでしょう。一方で、米国経済の現状は堅調そのものですから、短期と長期での逆転現象が発生したと考えられます。

 一部の投資家が懸念するように、やがて米国経済がスローダウンするのであれば、結果的に金利逆転は景気後退の前兆だったということになります。しかし、貿易戦争の懸念が後退すれば、再び、国債が売られることになりますから、これによって逆転現象が解消されることも十分に考えられます。

 つまり金利の逆転現象は、市場の見解のズレを示しているのであって、必ずしも景気後退の予兆であるとは限りません。市場の見解にズレが生じているということは、その後、市場が動くきっかけになりますから、いろいろな意味で要注意ではありますが、景気後退と直接的に結び付けて考えるのは、今の段階では少々拙速といってよいでしょう。