ドラッグストア業界5位のマツモトキヨシホールディングスと、業界7位のココカラファインが経営統合に向けて動き出しました。2019年8月に行った共同記者会見では、PB(プライベートブランド)の強化やアジア展開など、新しい戦略も打ち出されています。
ドラッグストアは、各社の独自色が強く、同じ業界でも店舗戦略はバラバラでしたが、今回の統合をきっかけに業界再編が進む可能性は十分にあるでしょう。
ココカラの争奪戦という状況に
マツモトキヨシとココカラの提携協議には紆余曲折がありました。ココカラは2019年4月、マツモトキヨシと資本提携に関する協議を開始すると発表しましたが、その直後、業界6位のスギホールディングスが待ったをかけ、ココカラとの経営統合を正式に打診。ココカラの争奪戦という状況になりました。
両社から提携を求められたココカラは、2つのプランについて検討したが、マツキヨとの提携の方がメリットが大きいと判断し、今回の正式発表となったわけです。ココカラの店舗数は1354店、マツキヨは1654店舗で、両者の店舗数を単純に合算すると、業界トップのツルハホールディングス(2082店舗)を上回り、業界トップとなります。
スギはココカラとの提携チャンスを逃しましたが、引き続き、他社との提携を模索する方針とのことなので、今回の経営統合をきっかけに業界が再編に向けて動き出す可能性は高まってきたといってよいでしょう。
小売業界は人口減少や市場の成熟化から伸び悩みが顕著ですが、ドラッグストア業界だけは例外で高い成長が続いています。ドラッグストアがめざましい成長を遂げている理由は、薬品を扱っていることで、他の小売店とは収益構造が違っているからです。
ドラッグストアの多くは、調剤薬局をベースに成長してきたので、利益率の高い医薬品を扱うことができます。一部の企業は、医薬品から得た利益を食品の安値販売に回すことで、消費者を囲い込み、規模の拡大を図るようになってきました。
コスモス薬品のように、食品の販売が5割を超えているところもあり、ドラッグストアは、もはや完全にスーパーやコンビニの競合といってよいでしょう。
規模拡大の難易度は高いが、再編は進む可能性が高い
ドラッグストアの市場規模は約7兆円で、10兆円といわれるコンビニ市場に近づいています。一部の専門家は今後、業界再編が進み、一気にコンビニ化、スーパー化が進むと予想していますが、ドラッグストア業界には、簡単に業容を拡大できない事情もあります。もっとも大きいのは店舗ごとの個性でしょう。
ひとくちにドラッグストアといっても各社の戦略はバラバラで、仮に経営統合を行ってもシナジー効果を得るのはそう簡単ではありません。
今回、経営統合を検討しているココカラとマツキヨは、都市型店舗が中心となっており、商品構成も非常に似通っていますから、統合の難易度は低いと考えられます。しかし郊外型店舗を中心とした企業の場合、必ずしも都市型店舗の企業とは相性がよくありませんし、調剤薬局の比率の違いも、社風の違いに大きく影響しています。
薬剤師を配置する必要性から、ドラッグストアは直営店が多く、フランチャイズ主体のコンビニのように簡単に出店、退店ができるわけではありません。
とはいえ、7兆円の市場規模に達した今、売上高が数千億円規模の企業が多数、併存しているのはやはり効率が悪いといわざるを得ません。何らかの形で資本提携や経営統合が進み、企業の大規模化が進む可能性は高いでしょう。