高齢ドライバーの事故が多発しているという話はウソ。もっと合理的な解決が必要

 このところ高齢ドライバーによる事故がクローズアップされるケースが多くなってきました。政府は自主的な返納を呼びかけていますが、高齢者の一部からは反発の声も上がっているようです。
 高齢になると判断能力が低下するのは事実であり、可能であれば返納した方がよいというのはその通りですが、高齢者による事故が多発しているというのは事実ではありません。単なるイメージや感情論で高齢ドライバーをバッシングし、返納を強要するだけでは問題は解決しません。

現実には若者による事故が圧倒的に多い

 2018年末時点における75歳以上の運転免許保有者は約564万人ですが、同年に自主返納した75歳以上のドライバーは約29万人にとどまっています。本人が認知能力の低下を自覚していないことが多いことに加え、一部地域では、クルマがないと生活できないという事情もあり、能力の衰えを自覚していながらも、運転を続ける人がいると考えられます。

 しかしながら、高齢者が事故を起こしているという話は単なるイメージに過ぎません。
 
 年齢別の免許保有者10万人あたりの事故数は、75~79歳が580件、80~84歳が630件と平均水準よりも高くなっていますが、16~19歳の事故数は1650件、20から24歳は980件ですから、全体から見ると若者による事故が突出して多いという状況です。
 昔から交通事故の大半は若年層ドライバーが引き起こすというのは社会常識であり、その状況が大きく変わったわけではありません。事故が多いというだけの理由で免許を返納せよという理屈では、2倍以上も事故を起こしている若年層との整合性がとれなくなってしまうのは明白です。

 アクセルとブレーキの踏み間違いなど、いわゆる誤操作についても同じ傾向が見て取れます。

 公益財団法人交通事故総合分析センターの調査によると、年齢別の誤操作による事故の割合は、24歳以下と75歳以上が突出して高いという結果が得られています。やはり高齢者と同様、若者が事故を起こしているというのが実態です。

menkyo

感情論を振りかざすだけでは問題は解決しない

 こうした状況で、高齢ドライバーに返納を強要しても、十分な効果が得られないのは確実です。高齢ドライバーの問題を解決するには、短期と長期に分けて具体的な手法について議論する必要があるでしょう。

 短期的には、自主的に返納してもらうよう啓発活動を行い、免許の保有者の絶対数を減らしていくしか方法はありませんが、返納にもっとメリットを加える必要があるでしょう。一部の国が行っているように、運転できる場所や時間に制限を加えた上で免許を引き続き交付するというやり方も考えられます。

 中・長期的にはやはりテクノロジーによる解決を目指すべきです。

 高齢者向けの運転補助システムの開発や、長期的には自動運転システムがやはり有力な解決策となりえます。日本ではタクシー業界の強い反対でライドシェアが規制されていますが、ライドシェアの解禁も検討すべきでしょう。
 欧州では、公共交通機関をITシステムを使って統合し、ひとつの移動サービスとして提供する(MaaS『マース』)と呼ばれる取り組みが行われていますが、こうしたITインフラの整備も、マイカーからの切り換えを促します。

 いずれにせよ、感情的に騒いでいるだけでは物事は進まない、という事実を多くの人が認識することが大事です。