トヨタが電池分野で中国企業と本格提携する意味

 国内自動車メーカーの中国シフトがいよいよ本格化します。中国市場を攻略するためにはEV(電気自動車)へのシフトが必須となりますが、最大のネックとなっていたのが電池の確保でした。主要な電池メーカーの多くは中国企業であり、日本の自動車メーカーは、EVの基幹部品を外国企業に頼る決断を迫られています。

ホンダに続いてトヨタも中国メーカーと提携

 トヨタ自動車が、世界最大手の車載電池メーカーである中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と戦略提携することになりました。トヨタはパナソニックと車載用電池の合弁会社を設立する予定ですが、世界のトップメーカーであるトヨタの生産台数を考えると、パナソニックからの調達だけでは到底、間に合いません。

 車載用電池市場は、中国メーカーと韓国メーカーが席巻しており、トヨタが必要とする電池を問題なく調達するには、中国メーカーとの戦略提携が必須と言われてきました。

 今回、提携に踏み切ったCATLは、2011年に創業したばかりの新興メーカーですが、急成長を遂げており、すでにパナソニックを追い越しトップ企業となっています。ちなみにCATLは、ホンダとすでに戦略提携を行っており、近いうちにトヨタとの提携を発表すると業界では噂されていました。

 各社とも中国企業との提携なしに電池を調達することは困難ですから、日本の自動車メーカーの中国詣でが続くことになるでしょう。

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産業構造のシフトに対応することが重要

 しかしながら、EVの基幹部品である電池の生産を外国企業に依存するというのは、自動車業界にとっては諸刃の剣です。もし何らかの事情で電池の供給が滞った場合には、日本メーカーはお手上げになってしまいます。これまでエンジンなどの基幹部品については、徹底的に内製することにこだわってきた日本の自動車メーカーとしては、まさに未経験の領域ということになります。

 もっとも、こうした状況も必ずしもピンチになるとは限りません。その理由は、EV時代には自動車業界の産業構造が根本的に変わる可能性があるからです。

 ガソリン車を中心とした時代においては、多数の部品メーカーを傘下に持ち、垂直統合システムを形成することにメリットがありましたが、EV時代においては、部品の汎用化とオープン化が進みますから、水平統合システムの方が圧倒的に有利になります。

 水平分業の典型的な例がIT業界ですが、特定部品を少数の寡占メーカーから調達するのは特に珍しいことではなく、それによって大きな問題は発生していません。しかしながら、水平分業の産業構造においてはコストは極限まで下がる可能性が高く、自動車の販売価格は確実に低下しますから、産業構造のシフトに合せて、経営体制も変えなければなりません。

 中国メーカーに依存することよりも、新しい時代に合った経営体制、生産体制にシフトできるかという問題の方がむしろ各メーカーにとっては重要でしょう。