日本企業の経営は長期的という話は本当か?(前編)

 かつて、日本企業は長期的な視点で経営を行い、米国企業は短期的な利益ばかり追求していると誇らしげに語られてきました。しかし、日本企業が長期的で米国企業が短期的という話は、今や完全に立場が逆転しています。というよりも、日本企業が戦略的に長期的な経営方針を採用したことはなく、日本が長期的な視点を持っているというのは単なる神話に過ぎません。

 わたしたち日本人は自分たちの調子がよいと、他人や他国を見下し、傲慢になる傾向が顕著です。日本の劣勢がはっきりした今こそ、わたしたちはもっと謙虚になり、諸外国から真摯に学ぶべきでしょう。

売上高が伸びていないのに、社員数は増えている

 企業の売上高というのは、基本的にその国にGDP(国内総生産)の伸びに比例します。さらに言えば、近年は経済のグローバル化が進んでいますから、全世界のGDPとも連動することになります。過去20年で先進各国のGDPは1.5倍から2倍に拡大しましたから、本来であれば、日本のGPDや企業の売上高もそれに応じて拡大しなければなりません。

 ところが過去10年、日本のGDPはほぼ横ばいで推移し、日本企業全体の売上高もほとんど伸びていないのが現実です。日本だけが世界から取り残され、その結果として近年、かなり貧しくなっていることは多くの人が気付いていることと思います。

 一方、日本企業の利益率は同じ期間で大きく上昇しました。

 過去10年間で売上高に対する当期利益率は2倍に拡大しているのですが、売上高が伸びていないにもかかわらず利益だけが増えているのは少々不自然です。その理由は、猛烈な勢いでコストカットを進めたからに他なりません。

 同じ期間で日本企業は原価を3.5ポイント下げています。おそらくですが、下請けなどへの値引き要求を厳しくしたり、品質を下げた原材料を調達することでコストを削減した可能性が高いでしょう。

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実は人件費はカットしていない

 ではコストカットの一貫で人件費を減らしているのかというとそうではありません。過去10年間で日本企業は売上高が伸びていないにもかかわらず、従業員の総数を3%も増やしているのです。その間、従業員の平均年収は変わっていませんから、総人件費はその分だけ増加しました。

 確かに1人あたりの年収は上がっていないのですが、人件費全体で見れば、コストカットどころかむしろ増やしているというのが実態なのです。

 では日本企業はなぜ売上高が伸びていないのに積極的に社員を増やしているのでしょうか。その理由は余剰人員の抱え込みであり、これが日本企業をがんじがらめにしています(次回に続く)。