串カツ田中の業績に見る、禁煙化待ったなしの現実

 ほぼ全席の禁煙化に踏み切った「串カツ田中」の決算が好調だったことから、居酒屋という業態においても禁煙化がマイナスにならないことが明らかとなりました。今後、喫煙者の数が激減することを考えると、飲食店は、どこかのタイミングで完全禁煙に舵を切る必要があるでしょう。

全席禁煙化でも増収増益を実現

 串カツ田中ホールディングスの2018年11月期決算は好調でした。同社はこの期から連結決算に移行しており、単独決算だった前の期と単純に業績を比較することはできません。しかし業績予想との差分や店舗の増加数などを総合的に考えると増収増益の好決算とみて差し支えないでしょう。

 同社は2018年6月、立ち飲み形式の店舗を除く、ほぼすべての店舗における全席禁煙に踏み切りました。多くの関係者が業績について注目していましたが、禁煙化の影響は客単価と客数に顕著に表われています。

 既存店(直営店)の業績推移を見ると、全席禁煙を実施した6月以降、客単価が前年割れする月が続いており、明らかに客単価が下がったことが分かります。喫煙する客は長居する傾向が強く、その場合、アルコールを余分に注文するので、一般的に喫煙者の客単価は高いとされます。喫煙者がいなくなったことでアルコールの注文が減った可能性は高いでしょう。

 一方、禁煙化後、客数は大きく増えましたが、客数の伸びを牽引したのは家族連れです。禁煙後、9月を除いてほぼすべての月で入店者数が前年実績を上回っており、平均すると5.7%ほど顧客数が増えました。

 禁煙化で客単価は減少したものの、それを上回る顧客数の増加があり、最終的な業績は増収増益となったわけです。

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客数が増えなければビジネスとしては意味がない

 この結果は、多くのチェーン店に禁煙化の動きを促すものといってよいでしょう。最大の理由は客数が増えたことです。

 飲食店の業績は、基本的に客単価と客数で決まります。2つはなかなか両立しないのですが、業績拡大のためどちらを取るのかというのはチェーン店に限って言えば明白です。それは「客数」ということになるでしょう。

 チェーン店は、業容を拡大しなければ意味がありません。多くのチェーン店が利益率を犠牲にしても価格を据え置いているのは客数が規模拡大にとって大事なファクターだからです。客数が増えたということは、潜在的な顧客がたくさんいるということであり、これは非常に重要なサインです。客数が増える方策について検討するのが経営の王道ですから、今回の串カツ田中の決断は戦略的に正しいということになります。

 JT(日本たばこ産業株式会社)の調査によると2018年における喫煙率は男性が27.8%、女性が8.7%、男女計が17.9%でした。高齢者を除くと20代の喫煙率がもっとも低く、過去20年で喫煙率の低下がもっとも大きかったのも20代です。

 つまり若い人ほどタバコを吸わなくなっているということですが、この傾向は今後、さらに顕著となってくるでしょう。状況を客観的に捉えれば、多くの店舗が同じ決断を迫られるのは確実であり、その決断が早ければ早いほど、最終的な損失は少なくなると考えられます。