経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経済

10~12月期のGDP、プラス転換したものの状況は厳しい

 内閣府が2018年10~12月期のGDP(国内総生産)速報値を発表しました。物価の影響を除いた実質で0.3%のプラス、年率換算にするとプラス1.4%となりました。
 7~9月期は大幅なマイナス成長でしたが、今期はプラス転換しました。2018年全体でもプラス成長でしたが、かなり厳しい状況であることに変わりはありません。

設備投資は大幅プラスだったが、足元では中国経済失速の懸念が・・

 GDPの6割を占める個人消費は0.6%のプラスとなりました。7~9月期は0.2%のマイナスだったことを考えると、戻りは鈍いと見た方がよいでしょう。
 
 GDP全体への寄与度という点でもっとも大きかったのは企業の設備投資で、こちらは2.4%のプラスでした。設備投資がプラス成長を牽引した図式ですが、これについても前期の反動という側面があることは否定できません。7~9月期の設備投資は2.7%という大幅なマイナスでしたから、この分を取り返したに過ぎないからです。

 しかも設備投資は今後、縮小する可能性も指摘されています。2018年の後半から中国経済の失速が顕著となっており、日本電産など日本の有力メーカーの多くが業績の下方修正を余儀なくされています。この状況が続いた場合、日本企業は設備投資を控えることになりますから、1~3月期以降のGDPにもその影響が及んでくるでしょう。

 米国と中国は貿易戦争の状況となっており、今のところ交渉は妥結していません。しかも中国経済の失速が深刻な状況となっており、2019年にはあまり明るい見通しが立てられない状況です。
 ここで企業の設備投資が伸び悩むようであれば、1~3月期以降のGDPも低めに推移とする見ておいた方がよさそうです。

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輸出主導型経済からの脱却には地道な努力が必要

 日本はこのところ長期にわたって消費が低迷するという状況が続いているのですが、最大の理由は、輸出主導型の経済構造から脱却できていないことです。

 数字上、日本のGDPに占める輸出の割合は小さくなっていますが、製造業の輸出が拡大し、それに伴って製造業の労働者の賃金が上昇し、消費を拡大させるという図式は大きく変わっていません。日本企業の競争力が低下した分だけ規模は小さくなっていますが、これは高度成長期のモデルを縮小したような形です。言い方は悪いですが、劣化版の昭和型経済が継続しているのです。

 このため日本経済は、米国の景気が拡大して輸出が増えると成長率が高まり、米国の景気が足踏みすると日本のGDPも低迷するので、自分自身で成長をコントロールすることができません。

 日本はすでに成熟国ですから、中国や韓国とコストで勝負するようなビジネスは割に合いません。欧米先進国のように、消費主導で経済を成長させるモデルに転換する必要がありますが、そのためには、人材の流動性確保など超えなければならないカベがたくさんあります。

 近年のGDPの推移は、外需に依存する日本経済の現状を如実に示しています。消費主導経済を実現するための魔法はなく、地道な努力を積み重ねるしか解決策はありません。

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