経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. お金持ち

お金持ちになるために経済学の知識は極めて有効

お金持ちを科学する 第35回

 ほとんどの人にとって「経済学」と「お金儲け」は、あまり結びついていないと思います。お金持ちになるためには、何らかの形で継続的に投資を行う必要がありますが、例えば、株式投資を積極的に行っている個人投資家に話を聞いても、「経済学なんか勉強しても投資には何の役に立たないよ」と一刀両断にされるのがオチでしょう。

 一方、経済学に詳しい人は、たいていの場合、投資とはまったく無縁の世界に生きています。つまり経済学を勉強する人と、投資をする人は人種が違うということなのですが、はたしてこれは合理的なことなのでしょうか。筆者はそうは思いません。
 実際、もっとも偉大な経済学者であるジョン・メイナード・ケインズ氏は、個人投資家としても知られており、経済学の知識を投資に生かし、今の金額で数十億円の資産を作っています。

経済学が分かっていれば、アベノミクスとトランプ相場で確実に勝てた

 筆者も経済評論家として仕事をする傍ら、個人投資家としても活動しており、日常的に億単位の株式・債券投資を行っています。当然のことながら、市場の見立ては、経済評論家として経済を分析した結果をベースにしています。

 もちろん経済が分かったからといって、どの銘柄が上がるのか予測することまではできません。しかし投資というのは、タイミングが重要であり、市場全体の動きを知ることができれば、勝率はグンと上がるものです。この部分においてマクロ経済の知識はとても役に立ちます。

 また株式投資とひとくちいってもやり方は様々で、上昇する個別銘柄を徹底的に探すという方法もありますし、市場全体、相場全体の動きを予測して、その流れに乗るという方法もあります。後者の場合、銘柄の選定はそれほど重要ではありません。そして、相場全体の動きを予測するという作業において、経済学の知識は極めて有効です。

 実際、筆者はリーマンショック前に一旦投資から撤退し、その後、しばらく投資を控えていましたが、アベノミクスがスタートする直前に投資を再開。アベノミクス相場では大きな利益を上げることができました。またトランプ氏が大統領に当選したことをきっかけに、米国株を大きく買い増し、やはりトランプ相場で利益を上げることができました。

 アベノミクス相場でもトランプ相場でも、ごく普通の銘柄を買っただけですが、どれも1.5倍から3倍になっています。このタイミングで買い出動した理由は、マクロ経済の理屈上、株価が大幅に上昇することがほぼ確実だったからです。

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銘柄に頼らなくても株式投資で成功できる

 アベノミクスの中核は量的緩和策という金融政策ですが、これは市場にマネーを大量供給し、インフレ期待を生じさせるというものです。アベノミクスに効果があったのかは賛否両論ですが、少なくともインフレ期待を生じさせる政策なわけですから、為替と株価が反応する可能性は高いというのが常識的な判断でしょう。

 トランプ氏の経済政策は、大規模な減税とインフラ投資です。

 日本では財政出動が効果を発揮しないという問題がありますが、それは日本が構造的な不況だからです。トランプ氏が大統領に就任した時点で、米国経済はすでに絶好調でした。ここに大規模な減税を実施するわけですから、株価が上がらないわけがありません。
 こうした政策が、将来、米国経済にどのような影響を及ぼすのかはまた別の話ですが、数年というタームでは株価が上がる確率は極めて高いというのが常識的な予想となります。

 こうした基礎的な市場の予想ができれば、多少、銘柄の選定で失敗しても、かなりの確率で投資で成功できます。特に長期的な投資であれば、その傾向はさらに顕著となってくるでしょう。

 この話は、筆者の最新刊である「億万長者への道は経済学に書いてある」で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひ読んでみてください(発売開始2週間で重版となりました)。

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