加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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旧地名を防災に役立てるという考え方は有用か?

 

 広島で発生した大規模な土砂災害をきっかけに、あらためて自身が住む場所の危険性に対する関心が高まっています。
 特に今回、災害が発生した地域は、古い地名が、土砂災害を連想させる名前であったことから、旧地名を知ることが、防災に役立つという話がネット上で話題になっています。

確かに旧地名は土地柄を表したものが多いが・・・
 確かに古い地名には、その土地の環境を示したものが少なくありません。

 東京はビルがたくさん建ち並んでいるのであまり目立ちませんが、実は高低差がたくさんある街です。渋谷や四谷はまさにその名前の通り、前後左右が急な谷になっている地形です。区画整理される前の古い地名には、特に場所との関連性が高くなっています。

 東京は海に近く、海を埋め立てて出来たエリアと、武蔵野台地と呼ばれる高台(いわゆる山の手)のエリアに大別されます。一般的には、埋め立てたエリアは地震の際に揺れやすく、高台の方が被害が少ないと予想されています。

 また高台にも谷の部分と山の部分があり、谷の部分には柔らかい地層が集積しており、相対的に地震に弱いといわれています。また谷が多い場所は、相対的に土砂崩れのリスクは高まると考えてよいでしょう。
 
 東京に限らず、地名が土地の状況を示しているケースは多く、場所を選ぶ際には、ある程度の参考にはなると考えられます。しかし、古い土地の名称だけにこだわり過ぎるのも考え物です。同じ名前でも由来が異なっており、自然災害とは関係ないというケースもあるからです。

 よく新興住宅地で「丘」がついているところは、以前のイメージを変えるために意図的に命名された証拠だといわれていますが、丘がつく地名のすべてが、そのような環境とは限りません。

 災害に対する準備を的確に行うためには、やはりその土地が持つ性質を科学的に把握しておくことが何よりも重要です。

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災害といってもいろいろなパターンがある
 東日本大震災をきっかけに津波に対する関心が非常に高まっており、各地の避難訓練も、津波が来ることを前提にしたものに変わってきています。
 しかし、地震による被害は津波だけとは限りません。火災が発生する可能性もありますし、相対的に建物の被害が大きい可能性もあります。

 筆者は、一度、巨大地震を経験していますが、実際に巨大地震が直撃すると、机の下に入るなどという行動を取ることはほとんど不可能です。
 無理に机の下に入ろうとして、不自然な姿勢を取るが逆に危険を伴う場合もあり、どのように行動すべきなのかは、臨機応変に考えるしかないというのが現実です。
 少なくとも、ひとつの事象にこだわるのは、あまり良い結果をもたらしません。

 住んでいる場所の安全レベルの判断も同様です。災害とってもそれは様々です。地震の揺れに対して強いの、土砂崩れが起きやすい場所なのか、高い場所なのか低い場所なのか、木造住宅が多く火災が起きやすいのか、道路のアクセスはよいのか、など多方面から検証する必要があります。
 
 最近はネットの発達で、様々な防災情報をネット上の地図に合わせて表示するサービスを提供する自治体も増えてきています。また、一定の手間をかければ、自分の土地に関する様々な分野でのリスク情報が手に入ります。

 せっかく発達したITをフル活用しない手はありません。こうした科学的な情報を使って、総合的に土地のリスクを考えるのが正しい姿といえるでしょう。

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