経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. お金持ち

借金してよい時と悪い時

お金持ちを科学する 第19回

 前回は、お金持ちと負債は切っても切れない関係にあることついて説明しました。お金持ちになるためには、負債とうまく付き合うことが重要となりますが、一方で負債は危険なものでもあります。負債を活用する場合には、最適なタイミングと方法について見極める必要があります。

事業や投資のスタート時に借金を抱えてはいけない

 筆者は基本的に、事業や投資をスタートするタイミングにおいて負債は抱えない方がよいと思っています。何もない段階で負債を抱えて失敗してしまうと、立て直すのが非常に困難だからです。

 近年は起業の環境が劇的に変化しており、極めて少額の資金で事業をスタートすることができます。むしろお金がない中で、どのようにして事業を展開するのか試行錯誤することは、非常によいトレーニングになるでしょう。

 そうなってくると、借金を使ってレバレッジをかけてよいのは、事業や投資が順調に進み、一気に規模を拡大したい時か、インフレが予想される時のどちらかということになります。

 借金を使ったレバレッジが非常に大きな効果を発揮するのは、事業や投資が軌道に乗り始めた時です。うまくいくことが分かった時には、ライバルに模倣されないよう、無理をしてでも一気に規模を拡大してしまうというのはひとつの考え方です。

 不動産投資においてもそれは同じでしょう。あるエリアや部屋のタイプなどで、かなりの手応えが得られた時には、思い切って借り入れを増やし、規模を拡大させた方がよいというケースはよく見られます。

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インフレ時の借金は資産拡大のチャンス

 もうひとつのタイミングはインフレが予想される時です。
 
 物価が継続して上昇する局面では、現金を所有している人は大きな損失となります。一方で借金を抱えた人は利益を得ることができます。物価が上昇すると見込める時には、借金をしてでも、不動産などの資産を購入することにはそれなりの意味があるわけです。

 経済には循環的要素があり、拡大と縮小を繰り返しながら、長期的な視点では拡大が継続します。景気が拡大する局面では資産価値が上昇し、物価もそれに合わせて大きく上昇します。このフェーズでは、借金が資産形成において効果的な役割を果たすことになります。

 一方、景気が縮小しデフレが続く環境では、借金は大敵です。時代の変化を読み取る目を持っているかどうかが、借金を有効活用できかどうかの分かれ目と考えればよいでしょう。

 借金をむやみに怖がっている人は、資産拡大のチャンスをモノにできないことがあります。一方で、安易に借り入れに頼ってしまう人は、どこかのタイミングで大きな損失を抱えてしまう可能性が高いでしょう。

お金持ちを科学する もくじ

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