お金持ちを科学する 第18回
お金持ちと負債は切っても切れない関係にあります。負債は返済しなければなりませんが、一方で、少ない元手を何倍にも増やすレバレッジ(テコ)としての側面を持っているからです。
不動産王の多くは借金王
トップクラスの資産家と呼ばれる人の中には、同時に巨額の借金を抱えている人が少なくありません。こうした傾向は特に不動産を主な資産としている人に顕著です。
巨額の資産を持つ不動産オーナーともなれば、総資産の7割程度が借金ということもありますが、一般的に借金は本当の資産とはカウントしませんから、総資産から借金を差し引いた分が、最終的な資産ということになります。
アパートなどを経営する、いわゆる大家さん業の人が、総資産が何億円と公言していることがありますが、そのうち、何%が借り入れなのかが分からなければ本当の意味での富を把握することはできません。
しかし、不動産の運用がうまくいっており、総資産額が極めて大きければ、借金を差し引いてもかなりの資産額となります。米フォーブス誌によると、六本木ヒルズなどを手がけた森ビルのオーナーだった故森稔氏は、約19億ドル(当時のレートで1500億円)の資産を保有していたと算定しています。
森ビルの当時の資産総額は1兆3000億円あり、このうち自己資本は約3000億円でした。株式は親族で分散しているので、稔氏がその半分である1500億円程度を所有していると考えれば、フォーブスの試算は辻褄が合います。
森ビルは全体の7割が借金でしたが、それでも資産額が極めて大きいので、森氏の純資産も相当な金額となったわけです。
レバレッジはうまく使えば大きな効果が得られるが・・
ちなみに、今から30年くらい前までは、森ビルはそれほど大きな会社ではありませんでした。資産額を短期間で急拡大できたのは、借金をうまく活用したからです。
借金にはレバレッジ(テコ)と呼ばれる効果があります。
例えば、1億円のアパート1棟を購入して、不動産の賃貸ビジネスを始めると仮定しましょう。このとき1億円が手元にないと事業がスタートできないかというとそうではありません。だいたい2500万円くらいのお金があれば、1億円のアパートを購入することができます。
その理由は、銀行が、残りの分を融資してくれるからです。
アパートの所有者からみれば、2500万円の資金しかないのに、1億円のビジネスができるということを意味しています。小さい元手をテコの原理で大きくするという意味で、こうした借り入れのことを、金融用語ではレバレッジと呼んでいます。
当然ですが、こうしたレバレッジの活用はリスクと隣り合わせとなります。投資やビジネスがうまくいっている時はよいですが、一旦、傾き始めると、借金が重くのしかかってきます。
自己資金だけでスタートしたビジネスは、うまくいかなければ最悪、それを放棄してしまえばおしまいですが、借金は事業を停止してもそのまま残ります。
レバレッジは重要なテクニックではあるものの、慎重に実施しないと再起不能の損失をもたらしかねません。借金をうまく活用できるかが、お金持ちになれるかの分かれ目と言われるのは、こうした理由からです。