経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 超カンタン経済学

コストプッシュ・インフレとディマンドプル・インフレ

加谷珪一の超カンタン経済学 第24回

 前回、解説したAD曲線とAS曲線を用いると、財政出動や金融政策が実施された時、物価にどのような影響が及ぶのかについて理解することができます。

財政出動も金融政策も物価の上昇をもたらす

 財政出動など拡張的な財政政策を実施した場合、政府支出(G)が増えるのでGDPは増加します(IS曲線が右シフト)。GDPが増えるので、AD曲線も右側にシフトすることになります。

 AD曲線が右シフトすると、新しい交点でバランスが取れるのですが、この時には物価は当初よりも上昇していることになります。つまり、財政出動を行うと、GDPが増加し、その結果として物価も上昇することになります。

 では金融政策の場合にはどうなるでしょうか。

 金融政策を実施するとLM曲線が右シフトしますから、やはりGDPが増えます。つまり財政出動の時と同じくAD曲線はやはり右シフトすることになります。結果として物価も上昇となります。財政出動と同様、金融政策もGDPの増大と物価の上昇をもたらすという結果になるわけです。
 
 これは主にケインズ経済学で編み出された分析手法ですが、これと対立する古典派と呼ばれる学派では、モノやサービスの供給量は物価に依存しないと考えます。このためAD曲線がシフトしても、GDPは変化しないということになるので、財政出動や金融政策は効果がないと判断されます。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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供給要因のインフレはスタグフレーションを引き起こすことがある

 財政出動を行ってGDPが増えると物価が上がるという因果関係がありますから、需要の拡大は物価上昇をもたらすと考えることができます。需要サイドの要因で物価が上昇することを、ディマンドプル・インフレと呼びます。景気がよい時のインフレはこのタイプとなります。

 一方、AD曲線ではなくAS曲線がシフトした場合にも物価の上昇が発生します。例えばオイルショックなど、原材料価格が上昇すると、同じ取引量で価格が上がりますから、AS曲線は左側にシフトします。

 このように供給サイドの要因で物価が上昇することをコストプッシュ・インフレと呼んでいます。人手不足によって物価が上昇するのはこのタイプのインフレです。

 ちなみにコストプッシュ・インフレの場合には、物価が上昇しGDPも減少しています。この状態が顕著になると、不況下のインフレ、つまりスタグフレーションが発生することになります。

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