経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資

投資は経験値がすべて。スポーツや習い事とまったく同じ

加谷珪一の投資教室 実践編 第17回

「習うより慣れろ」というのは投資の世界にもあてはまります。投資について勉強するのは大事なことですが、それ以上に重要なのは実際に取引して、経験を積むことです。

なぜか投資の世界は「いきなり」という人が多い

 基本的に投資は習い事やスポーツとまったく同じです。とにかくやってみることが何よりも重要です。これから野球をやろういう人が、キャッチボールもせずに、野球に関する本ばかり読んで勉強するというケースはほとんどないと思います。同様にピアノを習いたいという人が、教則本ばかり読んで、実際に弾いてみないということはあり得ないでしょう。

 野球がうまくなりたいと思うなら、今日からでもボールを握ればよいですし、ピアノが上達したいならとにかくたくさん練習することです。

 ところが投資の世界では、これとはまったく逆のケースをよく目にします。実際に投資をせず、延々と投資本を読んだり、人の話ばかりを聞くという人がとても多いのです。

 断言できますが、生まれつきの天才を除き、このような状態で投資スキルを上達させることはほぼ不可能です。
 本を見て理論を勉強することと、株価ボードを見ながら、実際に値を指して株を売買することには天と地ほどの違いがあります。野球やピアノと同様、上手になりたければ、練習を繰り返すしかありません。

 株式投資は8割の人が失敗するといわれていますが、筆者に言わせれば、そのうちの何割かは回避できる失敗です。逆に言えば、ロクに経験も積まないまま大きな金額で投資をすれば、失敗して撤退する可能性が高まるのは当然です。

 習うより慣れろという、ごく常識的な話が投資の世界では無視されているのです。

piano

テクニックや知識より心理面が大事

 失敗と成功の別れ目になるのは、知識やテクニックという実務的な部分ではなく、たいていが心理的な問題です。
 
 買った株が値下がりした時の感覚や、利益が出た株について、売ろうか保持しようか悩む時の独特の心境は、実際に投資してみなければ分かりません。持っていた株が下がると気持ちが激しく揺さぶられますし、逆に想像以上に株価が上昇すると舞い上がってしまいます。

 こうした心理的な動きをしっかりコントロールできないと、自分では思ってもみなかった決断をしてしまいます。これをうまく乗り越えるためには、場数を踏むことが何よりも重要なのです。よほどの天才でもない限り、経験を積んだ投資家にはかなわないと考えた方がよいでしょう。

 ある程度、経験を積んでくると、市場の状態が皮膚感覚で分かるようになってきます。ネット証券の株価ボードを眺めているだけで、市場の雰囲気が良いのか悪いのか、どんな銘柄が物色されているのか、どんな種類の投資家が活発に活動しているのかなど、おおよその見当が付きます。

 投資はプラスの利益を狙うゲームですが、一方で、減点をいかに回避するのかを争うゲームでもあります。もともと株式には成長期待というものがあり、何もしなくても利益成長していくものです。失敗を減らすだけで、実は投資のパフォーマンスは大きく向上するのです。

 失敗を減らすためには、経験を積むしかありません。小さな金額からでよいですから、あれこれ悩む前に、すぐに投資を始めた方がよいでしょう。

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