財政出動するとGDPはどう変化するのか(IS曲線シフト)

加谷珪一の超カンタン経済学 第18回

 前回はIS曲線とLM曲線について説明しました。IS曲線は財市場の均衡を示しており、金利が下がるとGDP(国内総生産)が増えるという関係です。LM曲線は貨幣市場の均衡を示しており、金利が上がるとGDPが増えるという関係になっています。

 この2つの曲線を利用すると、財政政策や金融政策が実施された時、最終的にGDPがどのように推移するのか、ある程度、予測することができます。

財政出動すると金利が上がる

 財政出動は景気対策としてよく用いられる手法です。日本ではバブル崩壊後、何度も大型の公共事業が実施されてきましたし、アベノミクスにおいても、財政政策は2本目の矢として位置付けられました。

 金利の水準が変わらない状態で財政出動が実施されると、民間の投資は同じ水準に維持されることになります。その理由は、投資は基本的に金利水準によって決まってくるからです。投資が変わらず、財政出動分だけ政府支出Gが増えるので、最終的にGDPも増える結果となります。

 一方、貨幣市場では、GDPが増えると貨幣の取引需要が増加します。貨幣の量が一定なら、その分だけ貨幣の資産需要が減らないとバランスが取れませんから、金利が上昇して債券投資を促進(つまり貨幣を放出)するような力学が働きます。
 また、政府が公共事業を実施する場合には、大抵の場合、国債を発行して市中からお金を借り入れます。大量の国債を発行すると、国債が余り気味となり、やはり金利は上昇するでしょう。

 金利が上昇すると、企業はお金を借りにくくなるので、設備投資が抑制されるという効果が出てきます。投資が抑制されるとGDPは減少するので、最終的にはある地点でGDPは落ち着く結果となります。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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金利の上昇は民間投資を抑制する効果を持つ

 これを、先ほどのIS曲線に当てはめると以下のようになります。

 財政出動が実施されると、同じ金利水準におけるGDPは大きくなるので、IS曲線は右側にシフトします。しかし、GDPが増えると貨幣に対する需要が増加し、やがて金利が上昇します。その結果、投資が減少してGDPも減少し、最終的な地点に落ち着くことになります。

 当初は財政出動した分、GDPが増えるのですが、これが金利上昇をもたらし、投資を減らしてしまいます。財政出動によって金利が上昇し、民間の投資が減ったということですから、財政出動が民間の投資を抑制したという解釈が成立します。

 財政出動を行ったものの、それによって民間投資が縮小して効果が薄れてしまうことを経済学の用語ではクラウディング・アウトと呼んでいます。財政出動を実施する場合には、民間投資などへの影響も十分に考慮する必要があるわけです。

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