加谷珪一の投資教室 実践編 第12回
多くの人があまり意識していないのですが、最適な投資手法は、投資に振り向ける資金量や年齢によって大きく変わってきます。また、どの程度のリスクを取るのかという部分についても同じことが言えます。
リターンを得たければリスクを取るしかない
株式はリスク資産であり、基本的に得られるリターンは取るリスクに比例します。ローリスクでハイリターンという投資は原則としてあり得ず、大きなリターンを得ようと思ったら、高いリスクを取る以外に方法はありません。
厳しいようですが、まずはこの大原則から逃れることはできないという現実を肝に銘じておく必要があるでしょう。
例えば、期待リターンが5%の銘柄で、リスク(1年間の株価のブレ幅のこと)が±20%の銘柄があると仮定します。
もし、1億円を運用するのであれば、期待リターンが5%でも十分な水準といってよいでしょう。なぜなら、5%の利回りがあれば、投資収益は年間500万円となり、それだけで生活できる水準だからです。
しかし、100万円しか投資金額がなかったらどうでしょうか? 年間100万円の5%ということになると、わずか5万円です。しかもリスクが±20%あるので、約68%の確率で60万円から120万円の範囲に収まるものの、残り32%の確率でそれ以上に株価が乱高下することになります。下振れリスクを単純に半分とすると、16%の確率で60万円以下になってしまう計算です。
1億円の余剰資金が一時的に4割なくなってしまうのと、100万円の余剰資金しかない人が、4割を失うのとでは、精神的なインパクトも異なります。すべての銘柄がそうですが、全員がその銘柄に投資するのにふさわしい存在とは限らないのです。
投資金額が小さい場合には、もっと大きなリスクを取って大きなリターンを狙うか、そうでなければ、安定的な銘柄を選び、長期間投資を継続することで、複利の効果を得るやり方の方が合理的でしょう。
年齢によっても取れるリスクは変わってくる
筆者自身は、すでにそれなりの資産を持っていますから、現在はミドルリスク・ミドルリターンの投資を行っています。しかし、資金量が乏しかった若い頃は、大きなリターンを得るため、高いリスクを取っていました。
若い世代の人であれば、株で失敗しても、仕事で取り返せばよいと考えることもできます。一方で、退職が近い年齢の人は、人生のやり直しがききませんから、当然、取れるリスクの範囲も異なってきます。
投資をする場合には、自分はどの程度の資金量を株に回すつもりなのか、そしてどの程度のリターンを望んでいるのか、自分にはあと何年、運用する期間が残っているのか、投資から得られるリターンは自身の生活水準に照らして適切なのか、など、多くの項目について総合的に検討しなければなりません。
その上で、お金がゼロになってもよいので大きく増やしたいというのであれば、ハイリスク・ハイリターンの銘柄を買えばよいですし、リスクを抑えたいのであれば、安全な銘柄に絞り、時間をかけてリターンを得ることになります。
もしかすると、多くの人がこれに該当するのかもしれませんが、本当はリスクを取りたくないと思っているのなら株式投資などには手を出さないことです。銀行預金だけで我慢し、その利子だけでは足りないというのであれば、辛くても一生、働き続けること以外に方法はないでしょう。厳しいようですが、これが現実です。
もっともよくないのは、皆がやっているから何となく投資をするというスタンスです。これだけは絶対に避けなければなりません。