コンビニ・ビジネスの基礎となっているチェーンストア理論とは?(前編)

コンビニ経済学 第10回

 コンビニを初めとする大規模小売りビジネスの理論的な基礎となっているのが、米国で発達したチェーンストア理論です。経営コンサルタントの故渥美俊一氏がこの理論を日本に紹介し、多くの経営者たちを指導しました。
 その結果、渥美氏を中心とした経営者グループの中から、現在の著名なチェーンストア企業が次々と誕生していったのです。チェーンストア理論とはどのようなものだったのでしょうか。

理論の中核となっているのは、集中化と標準化

 チェーンとストア理論とは、10店舗以上の多店舗を本部主導で効率的に運営するための方法論です。中核となっているのが、集中化と標準化の考え方です。

 多店舗展開を行い、商品の仕入れを本部が一括して行えば、仕入れる商品の絶対数を増やすことができます。店舗運営企業は、商品購入におけるボリュームを利用して、メーカーや卸と価格交渉を行うことで、低コストで仕入れることが可能となります。
 商品の仕入れ価格が安くなれば、その分、来店する顧客には安く商品を提供できますし、運営企業の利益も高くなります。これが仕入れの集中化です。

 集中化はこれだけにとどまりません。お店で使うレジや看板、ショーケースなども、まとめて発注することでコストを引き下げることができます。多店舗運営であることを最大限活用し、コストを引き下げるのが集中化の狙いです。

 こうした集中化を実施するには、商品構成や店舗のデザイン、オペレーションなどがすべて標準化されている必要があります。店ごとに異なる商品やオペーレションではボリューム・メリットが生かせません。したがって集中化を実施するためには、同時に徹底した標準化も必要となります。

 チェーンストア理論に立脚した企業の商品や店舗のオペレーションは徹底して標準化、マニュアル化されていますが、背景にはこうした考え方が存在していたわけです。

Photo by Mike Mozart

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「流通革命」には政治的な意味合いもあった

 こうした考え方を最大限生かすことができる業態はやはりスーパーマーケットといってよいでしょう。

 1960年代、生活水準の向上に伴って日本でもいわゆる大型スーパーの業態が普及し始めました。しかし、当時の日本は、豊かになったとはいえ、米国などに比べるとまだ貧しく、商品価格もメーカーが一方的に決めるという硬直的な市場でした。

 こうした状態に風穴を開け、大量調達によって安い商品を消費者に提供するというコンセプトを掲げて登場したのが、イオン(旧ジャスコ)であり、ダイエー(現イオン)であり、セブン(旧イトーヨーカ堂)だったのです。そしてこれらの企業はすべて渥美氏が主催するペガサスクラブのメンバーでした。

 当時、こうした試みは「流通革命」と呼ばれており、硬直的で権威主義的な日本社会に対する挑戦という意味合いがありました。

 各社が目指していたのは、米国を代表する大型スーパー「ウォルマート」のような業態です。ウォルマートは、究極的なチェーンストアといってよく、現在では50兆円という途方もない規模の売上高となっています。
 ウォルマートは圧倒的な購買力を生かし、メーカーに対して強気の価格交渉を実施。大幅な安値で製品を調達しており、店内には驚くような安値商品が並びます。

 ウォルマートのビジネスに対しては、いろいろと批判もあるのですが、圧倒的な安値で商品を提供することで、主に低所得者層の生活水準向上に寄与してきたのも事実です。日本でも同様の大型店舗を展開し、圧倒的な調達力を背景に、安い価格で消費者に商品を提供するというのが、各社の理想だったのです。

 しかしながら、日本におけるチェーンストアは米国とは異なる展開を見せます。その原因は政治でした。このあたりについては次回に説明したいと思います。

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