加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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家事代行分野で外国人労働者の受け入れを拡大する背景

 

 政府は、国家戦略特区など一部の地域において、家事代行サービスへの外国人労働者受け入れに踏み切ると報道されています。
 これは、以前から政府が検討を進め、成長戦略にも盛り込んでいたものです。しかし、本当に成長戦略として効果があるのか疑問視する声もあるようです。

多くの女性にとって家事代行サービスは無縁
 安倍政権では成長戦略の柱の一つとして女性の活用を掲げており、女性が社会に進出しやすいよう、こうしたサービスを拡充させる必要があるというのが政府のスタンスです。

 確かにこうした家事代行サービスが普及すれば、家事から解放され、仕事に集中できる人が増えると考えられます。しかし、多くの女性にとっては、こうしたサービスは無縁というのが現実でしょう。

 日本では、仕事をしていない人が4500万人ほどいるのですが、このうち約7割が女性です。専業主婦の正確な統計はありませんが、いわゆる専業主婦と呼ばれる人は1000万人を超えていると考えられます。

 働く男性の割合(労働力率)は世代を通じてほとんど変わらないのですが、女性の場合には、結婚適齢期といわれる25歳以降で減少するという傾向が見られます。これは結婚や出産を期に仕事をやめる女性が多いことが原因です。

 結婚適齢期以降の女性の労働力の減少分は580万人ほどですが、ここに該当する人が皆、仕事に就いたとすると、日本の労働力人口は10%ほど増加します。人口減少が叫ばれる中、こうした人材が労働市場で出てくることを政府は期待していると考えられます。

 しかし、男性と女性には、かなりの給与格差があるのが現実です。

 女性の就業者のうち、実に半数以上が非正規労働者となっており、女性の非正規労働者の平均年収は200万円程度しかありません。これは男性正社員の約半分です。200万円というのもあくまで平均であり、実際には100万円程度の年収しか確保できない人も少なくありません。

 つまり女性の就労は、今のところ補助的な収入を得る目的にとどまっており、少なくとも現時点においては、高価な家事代行サービスを活用することは難しいのです。

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外国からの要請?それとも移民政策への布石?
 では、なぜ政府はこうした施策を積極的に進めようとしているのでしょうか?そこには、いくつか理由があると考えられます。

 ひとつは、諸外国からの要請です。

 欧米企業の幹部は、自宅にメイドを雇うのが当たり前です。アジア各国では、英語ができ、低賃金で雇用できるフィリピン人のメイドが大人気です。しかし日本では、家事労働を目的に外国から労働者を呼ぶことができません。

 日本人労働者の場合、英語がネックになることが多く、外国人向けのサービスは人材不足になっているといわれています。実際、米国から規制緩和の要請があったと語る関係者もいるようです。

 もうひとつは、今後本格化する、外国人労働者受け入れの地ならしです。

 政府は、現在の外国人技能実習制度を大幅に拡大し、今後、本格的に外国人労働者を受け入れる方針を固めています。日本では人口減少によって、建設や外食の分野を中心に深刻な人手不足となっているからです。

 日本社会は解雇に対して極めて厳しいですから、これまでホワイトカラーだった人が解雇されて、こうした労働に従事するということはあまり考えられません。そうなってくると、外国人労働者に頼らないと、産業が成立しないという状況に陥ってしまいます。

 しかし日本社会は基本的に移民に対して否定的です。本来であれば、この問題をどう解決するのか、徹底的に議論する必要があるのですが、皆がこの問題から目をそらしています。

 移民の急激な増加はアレルギー反応が大きいですから、インパクトの少ない家事労働の分野から移民受け入れを開始し、徐々に他の分野に拡大していこうと政府は考えているのかもしれません。

 筆者自身は、日本の現状を考えれば移民受け入れ拡大はやむを得ないと思っていますが、最終的にこれを決めるのは、政治家でも公務員でも財界でもなく、わたしたち国民です。

 多くの日本人がやりたがらない労働も、日本人にやらせていくべきなのか、移民を受け入れるべきなのか、オープンな議論が必要でしょう。

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