有識者はたいていの場合、利害で発言している(アナリスト編)

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第17回

 経済や金融、投資の分野では、アナリストやエコノミストといった肩書きを持つ専門家の意見を耳にする機会がもっとも多いのではないかと思います。彼等が発信する情報にはどのような特徴があるのでしょうか。

アナリストやエコノミストがいるのは販売促進になるから

 アナリストやエコノミストのほとんどは証券会社など金融機関に所属していますから、彼等の意見は当然のことながら、所属する金融機関に左右されることになります。まずはこの事実をしっかりと押さえておくことが重要です。
 
 アナリストの仕事は個別企業の株価や経営状況について分析し、今後の株価の推移を予測することです。一方、エコノミストは、個別企業は分析対象とせず、経済全体について分析したり、今後の動きについて予測します。分析対象が経済全体なのがエコノミストで、個別企業に限定されているのがアナリストと思えばよいでしょう。

 証券会社や銀行といった金融機関は、高い年俸を払って多くのアナリストを雇っています。しかし、実際に顧客に対して金融商品を売り込みに行くのは営業マンの仕事です。営業をするわけでもないのに、給料の高いアナリストをわざわざ雇っているのは、それが株式や債券などの販売促進につながるからです。

 個人投資家は皆が経験豊富というわけではありませんから、どのような銘柄に投資すればよいのかについて情報を欲しがります。営業マンは直接、どの株が上がるのか予想して顧客に勧めることはできませんから、その代わりに、ある程度、中立的な立場で市場の分析を行うアナリストを在席させ、投資家に対して情報の提供を行います。

 有名なアナリストがいるとその証券会社は営業しやすくなりますから、その分、アナリストの社内での評価が上がります。このため、多くのアナリストは雑誌やテレビに出演したり、コメントを出して名前を売ろうとします。彼等にはこうしたインセンティブがあるということを理解しておいてください。

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アナリストに仕事を押しつけるファンドマネージャーも

 これは個人投資家向けの話ですが、実は機関投資家向けでも似たようなものです。

 投資ファンドといったプロの投資家は、まさに投資のプロですから、アナリストなどの意見を参考に銘柄を決めることなどあり得ないと思っている人も多いでしょう。しかし現実はそうではなく、プロの投資家にとってもこうしたアナリストは重宝されるのです。その理由は、ファンドが顧客のお金を預かる立場だからです。

 顧客からお金を預かっている以上、なぜその銘柄に投資をしたのか、誰もが納得できる説明が必要となります。その時に意外と役に立つのがアナリストの分析結果です。
 多くのアナリストが出した分析結果に沿って投資をしておけば、うまくいかなかった時でも、ある程度、状況を釈明することができます。このためプロの投資家でも人によってはこうしたアナリストの分析を必要としているのです。

 さらにひどいケースになると、投資家に対して提出する報告書の内容を、ちゃっかりこうしたアナリストに代筆させているファンドマネージャーもいます。また証券会社の営業マンとアナリストが一緒になって投資会社のファンドマネージャーを接待するケースもあります。
  
 それはともかくアナリストの本当の仕事は、自分が属する金融機関にたくさんの注文が入るようにすることです。したがって、顧客である投資ファンドがびっくりするような内容をレポートに書くことはできませんし、また企業の業績や経営方針について批判するような内容も原則としては御法度です。

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