以前、このコラムでは相対的貧困率について解説しましたが、今回、取り上げるのはジニ係数です。ジニ係数は、所得がどの程度、不平等なのかを示す指標です。貧困とも関係する話ですが、ジニ係数の主題はあくまで所得分布であって、貧困そのものではありません。
1に近いほど所得が不平等であることを示している
ジニ係数は所得の不平等を示す指標で、0から1の値を取ります。分布が完全に平等であれば0となり、完全に不平等の場合には1となります。つまり1に近いほど、貧富の差が激しいということを示しています。
具体的にジニ係数を求めるためにはローレンツ曲線を用います。横軸に累積の世帯数を、縦軸に累積の所得額をとってグラフを描きます。すべての世帯の所得が同じであれば(完全に平等)、累積世帯数と累積所得は比例しますから、グラフの傾きは対角線となります(図のAC線)。
一方、1つの世帯がすべての所得を独占していた場合、世帯数が最大になったところだけが、すべての所得を得ていますから、グラフは逆L字型になっているはずです(図のABC線)。実際にはその中間となりグラフは弓形の形状を描くことになるわけです。
ジニ係数とは、「対角線と弓形曲線で囲まれた部分の面積」と「対角線を1辺とする三角形の面積」の比率を示したものになります。前者を(a)、後者を三角形ABC、つまり(a)+(b)とすると、具体的にはジニ係数=(a) /[(a)+(b)]で求めることができます。
日本は先進国の中では所得格差が大きい部類に入る
ジニ係数はあくまで所得分布の偏りを数字で一意的に表わしたものですから、相対的貧困率と直接関係するものではありません。
両者が用いる所得の定義には違いがありますから、厳密にいうと同一に比較することができない指標です。しかし貧困に陥っている人の数が増えるとジニ係数は悪化しますから、密接な関係があると思ってよいでしょう。
ただ、ジニ係数は特定の超富裕層がたくさんお金を持っていると高く出る傾向があり、米国のような国は高く算出されることになります。
ジニ係数について考える場合には、所得を再分配する措置の有無についても考慮に入れる必要があるでしょう。当初は貧富の差が激しくても、政府が提供する所得の再分配機能があれば、結果的に社会を平等にすることができるからです。
日本のジニ係数は、所得再分配前が0.570、所得再分配後は0.376となっています。OECD(経済協力開発機構)の基準で国際比較した結果では、所得再分配後でもOECDの平均値より高い値を示しており、日本は格差が大きい国であることが分かります。
主要国の中で、日本よりもジニ係数が大きい(格差が大きい)のは米国と英国で、ジニ係数が小さい(格差が小さい)のは、フランスやドイツなどで、イタリアは日本と同程度です。米国と英国の数値が高いのは、超富裕層が上を引き上げているからと考えられます。日本の格差が大きいのは、貧困層が多いことが主な要因と考えられます。