何と言ってもお金持ちになりやすいのは実業家

お金持ちを科学する 第7回

 これまで過去3回にわたって、日本の長者番付の推移を眺めてきました(本連載のもくじ)。時代を通して見ると、業種が変化するとはいえ、富裕層には実業家が多いということがよく分かります。特に「超」のつく富裕層になると、ほとんどが実業家です。

お金を生み出す仕組みの違い

 では、なぜ実業家がお金持ちになりやすいのでしょうか。いくつか理由がありますが、もっとも大きいのは収益を生み出す仕組みと税金でしょう。

 トップクラスの芸能人やスポーツ選手ともなれば、年間十数億円を簡単に稼ぎ出してしまいますが、ここまで稼げるのは、ごく一握りであり、普通の人がここまでの収入を得ることは困難です。しかも、1人の人間にできることには限りがあります。いくら稼げる才能があっても、稼ぎを5倍にしたり、10倍にするのは容易ではないでしょう。

 しかし事業の場合、そうではありません。

 企業は人をいくらでも採用することができますから、ニーズがある限り、企業は収益をいくらでも拡大させることが可能です。高収益企業ほど、ビジネスが仕組みとして確立しており、どのような人を採用しても、一定以上の成果を発揮することができるようになっています。

 つまりたった1人が立ち上げた事業であっても、場合によっては何千人分の利益をもたらしてくれるわけです。

 もちろん、こうした形になるまで事業を育てるためには、かなりの才能や努力が必要となりますが、10数億円程度を稼ぎ出す程度でよければ、世の中には無数の事業があります。芸能人やスポーツ選手として成功する確率に比べれば敷居は低いでしょう。

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日本の中間層以下の所得税は実質的に無税に近い

 それと、実業家にとって有利なのは税金です。日本はよく知られているように累進課税制度を採用しており、所得が大きいほど、たくさん所得税を取られることになります。

 図は日本の給与所得者の数と納税された税額を示したものです。給与所得者ですので、自営業者は入っておらず、従業員もしくは経営者という形で会社から給料をもらっている人のデータになります。

 このデータからおおよその税率を計算すると、驚くべきことが分かります。年収500万円に満たない人は2%以下の税率ですので、所得税については実質的に無税に近い状況となっているのです(名目上の税率はもっと高いですが、各種控除などがあります)。

 日本人の平均年収は300万円台ですから、極論すると、平均的な労働者は所得税をほとんど納めなくてもよい制度といってよいでしょう(あくまで所得税についてです。実際には地方税などがこれに加わりますのでまったくの無税ではありません)。 
 一方、年収が1500万円を超えると所得税率は急激に上昇し、2500万円超の人は34%もの税率となってしまいます(さらに年収が増えると、名目上は45%の税率が課せられます)。日本では給与所得者のわずか4.3%に過ぎない年収1000万円超の人が、所得税収の半分を負担している状況なのです。

 際限なく給料の額を上げてしまうと、制度上、税金ばかりが増えて損をしてしまいます。
 
 しかし、株式会社にして、会社が稼いだ利益の中から配当をもらうようにすれば、所得税よりも税率を低く抑えることができます。経営者としての報酬に加えて、投資家としての配当収入も得ることができ、会社の規模が大きくなれば、配当の金額もそれに比例して増加します。

 詳しくは後述しますが、給与などフローという形でお金を稼ぐよりも、会社の株式などストックを活用してお金を稼ぐ方が圧倒的に効率がよく、これが資産家になるための最短距離ということになるでしょう。

お金持ちを科学する もくじ