有識者はたいていの場合、利害で発言している(元公務員編)

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第15回

 前回は学者の話を聞く際の注意点について解説しました。しかし、同じ学者という肩書きを持っている人でも、別の職業から転身してきた人が大勢います。こうした人たちにはまた別のベクトルがありますから注意が必要です。

同じ学者でも元公務員は人種が全く異なる

 中央官庁の公務員を辞めて学者に転じる人は少なくありませんが、同じ学者といっても、公務員出身者の場合、純粋に学術の世界でキャリアを積んだ人たちとはまるで状況が異なります。

 公務員出身の学者は、基本的に学者になっても出身母体である省庁の利害を背負っています。したがって、公務員出身の学者が、ある事柄についてコメントしたり、雑誌に寄稿する場合には、原則として出身官庁が推進している政策に沿った中身になると考えた方がよいでしょう。

 逆に考えれば、彼等の見解を知ることができれば、その官庁がどのような方針なのか理解できるわけです。

 中央官庁の中でも特に力があるといわれているいくつかの省庁では、自省出身者を活用して世論誘導を行うことがあります。発言内容などを常にチェックしていれば、誰がそうした役割を担っているのか分かってきますから、発言の内容やタイミングなどをチェックしておくことは重要な情報収集活動となります。

 一方、同じ公務員出身の学者でも、さらにベクトルが異なっている人がいます。彼等は出身母体の利害とは逆のことをコメントすることが多いのですが、たいていは出身省庁と対立して職を辞した人です。

 中央官庁のキャリア公務員だった人は、いわゆる受験エリートですから非常にプライドが高く、いざ出身母体と対立するとなると、それに全力を傾ける傾向があります。彼等の発言を聞く時には、こうしたバイアスを考慮に入れる必要があるのです。

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政治家を目指す理由は「リベンジ」

 このケースに限った話ではありませんが、常に反対に考えることで、無意味な情報も一転して有益な情報源となり得ます。役所とケンカした公務員の場合、彼等が指摘する部分は役所側がもっとも指摘されたくない部分であると解釈できます。

 先ほど、公務員出身者はプライドが高いという話をしましたが、官庁とケンカして辞めた公務員の中には、政治家への転身や、政権のアドバイザー就任などを考える人も少なくありません。それは出身母体の官庁に対してリベンジするためです。

 こういったケースでは、政権が重点的に進めようとしている政策を強く支持する傾向が顕著となります。なぜなら、政治家の目にとまって引き上げられる事を彼等は強く期待しているからです。出身官庁よりも、自身の次のキャリアにベクトルが向いていますから、発言内容もそれを前提に解釈する必要があるでしょう。

 つまり、本人がどこの組織に所属し、どのようなキャリアパスを描いているのか、情熱のベクトルがどこに向いているのかによって、発言は変わってきます。情報の受け手は常にそれを前提にしなければなりません。

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