経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 経営論

リーダーシップはパワーではない

加谷珪一の知っトク経営学 組織編 第5回
【リーダーシップ論 後編】

 前回は、リーダーシップというものは、才能ではなく行動様式であることについて解説しました。リーダーシップが行動様式なのであれば、具体的にどう振る舞えばよいのか体系立てて考えることができるはずです。

リーダーシップを構成する4つの機能

 経営学的に見た場合、リーダーシップの基本的な機能としては、以下のようなものがあります。

 ①組織のミッションや価値観を定義する
 ②仕事のやり方を指示する
 ③メンバーのモチベーションを維持する
 ④メンバーの仕事を適切に評価する

 こうした機能を総合的に作用させることが組織におけるリーダーの役割ということになります。

 ②から④については、多くの人がイメージしやすい仕事だと思います。部下をうまく動機付けて成果に結びつけ、それを適切に評価するのは上司の基本的な仕事です。

 仕事のやり方を指示するというのも、リーダーにとっての大事な仕事です。

「やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」という言葉は、元海軍大将山本五十六の名言(本人が直接書き残した言葉ではないといわれています)ですが、これはまさにリーダーの仕事を端的にまとめたものといってよいでしょう。

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力を誇示するだけがリーダーではない

 リーダーシップについてよくある勘違いが、単にパワーを行使することだと認識してしまうことです。リーダーシップとは①で示しているように、ミッションを示すことであり、力を誇示するだけでは不十分です。

 確かに、リーダーシップを発揮するためには、人事権などを使って相手に圧力をかけるなど、パワーの行使を伴うこともあります。しかし、金銭や人事権だけを使った組織のマネジメントは長続きしないというのが一般的な理解となりつつあります。

 ネット企業最大手のグーグルは、従来とは異なるリーダーシップ像というものを提示して話題となりました。同社では分かりやすく、ボスとリーダーの違いと説明しています。

 ボスは人に指示したり、命令して業務を進める人のことを指しています。一般的な上司のイメージはこのボスのイメージということになるでしょう。しかし、リーダーは必ずしもボスであるとは限りません。

 ここでいうリーダーとは、チームが何らかの問題に直面した時に、適切なタイミングで自分が口火を切り、その問題解決をリードできる人のことを指しています。つまり、役職とは直接関係しないということです。こうした能力を身につけた人が、最終的には高いリーダーシップを発揮できると同社では考えているようです。

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