公共事業は手っ取り早い景気拡大策だが

加谷珪一の超カンタン経済学 第8回

 経済全体の動きを理解するためには、消費(C)と投資(I)に加えて、政府支出(G)についても考慮に入れる必要があります。現在、日本の政府支出は年間約100兆円です。設備投資とほぼ同じ水準ですから、景気に対してかなりの影響があります。

政府支出だけは金額を恣意的にコントロールできる

 政府支出の最大の特徴は恣意的に増減できるという点です。消費や投資は基本的に家計や企業の意思の総体としてその支出水準が決まりますから、皆が望むようにコントロールするのは至難の業です。

 消費が低迷し、設備投資が伸びていないことは多くの人が認識していますが、だからといって消費や投資を伸ばそうといっても、皆がそのように動けるわけではありません。例えば経済団体の幹部は「最近の日本経済は設備投資が伸びていないことが問題だ」などと発言しますが、自身が経営する企業は、設備投資を絞っているのが現実です。

 しかし政府支出であれば、国会で予算の額を決めさえすれば、支出を拡大したり、縮小することが容易に実現できます。政府支出の拡大は、景気対策としてよく活用されていますが、それは恣意的に金額を決めることができ、支出を容易に増やせるからです。

 政府が支出を増やせば(いわゆる財政出動)、政府に対して製品やサービスを売った企業の従業員は所得が増えますから、消費も拡大していきます。また、公共事業という形でインフラを建設すれば、それが新しい生産に結びつき、公共事業に投資した以上の経済効果が得られる場合もあります(これを乗数効果と呼びます)。

 景気対策として財政出動が多用されるのはこのような理由からです。

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政府が市場より賢くなることはほぼ不可能

 しかしながら、安易な財政出動にはいろいろと弊害があります。最大の問題は世の中のお金の流れを恣意的に変えてしまうことです。政府支出の原資は国民から徴収した税金ですが、もし余分な税金がなければ、家計は別のモノに支出していたはずであり、これが新しい製品やサービスを生み出す原動力になっていた可能性があります。

 財政出動の原資が国債でも結果は同じです。国債によって調達される資金は、家計の貯蓄から充当されます。本来は、そこではなく別の投資に回っていた可能性のあるお金ですから、やはりお金の流れを変えてしまうことに変わりはありません。

 もし政府が市場メカニズムよりも優秀で、もっとも効果的なお金の使い方を選択できるのであれば話は別ですが、現実の政治にこうした機能を期待するのは困難でしょう。政府が市場メカニズムよりも賢く支出できないという話は、学術的にもほぼコンセンサスが得られています。

 日本はこれまで多くの公共事業を行ってきましたが、全国に誰も使っていない橋や道路がたくさんあることは多くの人が認識していると思います。

 GDPの定義上は、政府支出を行えば、それがどのような内容でも、その分だけはGDPは増えます。しかし、それが経済成長に対してほとんど効果を発揮していないというケースはザラにあります。政府支出というものは、基本的に抑制的である方が望ましいでしょう。

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