EV(電気自動車)メーカーのテスラが厳しい状況に直面しています。一部の投資家が同社の継続性について疑問視する発言を行ったことから、株価が一時、急落する騒ぎとなりました。経営危機というのは言い過ぎですが、同社の台所事情が苦しいのは間違いありません。
量産延期にリコールが重なり、株価が下落
テスラは当初、最新の「モデル3」を2017年7月に量産開始する予定でしたが、何度も延期を繰り返し、今年の6月にようやく出荷できる見通しが立っています。こうしたところに主力車種である「モデルS」に不具合が発覚。12万3000台を対象としたリコール(回収・無償修理)を余儀なくされました。
不具合そのものは軽微でしたが、量産化が遅れたところにリコール騒ぎとなり、一部の投資家が今後の継続性を疑問視する発言を行ったことから、騒ぎが大きくなってしまいました。
これに対して同社CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏は、エイプリルフールのツイッターで「テスラは破綻した」とあえて挑発的につぶやき、強気の姿勢をアピールしています。
最新モデルの生産が順調だというニュースが伝わり、ほどなく株価は回復しましたが、ピーク時と比較すると安値で推移していることに変わりはありません。また、財務体質も悪化しており、以前と比べて厳しい状況に置かれているのは事実といってよいでしょう。
借り入れが増大しているが、ヤマは超えた?
同社の2017年12月期における売上高は117億5800万ドル(約1兆2500億円)と前年比で68%も増えましたが、売上高に比例するように赤字も拡大しています。営業損失は前期比約2.5倍の16億3000万ドル、純損失は19億6000万ドルに達しました。
テスラの原価率(全部門)はもともと高く、あまり儲からない体質なのですが、前期と比較すると77%から81%に上昇しており、さらに利益を出しにくくなっています。これに加え、開発費や販売費が急増しており、これが赤字を増やす原因となっています。
特に同社の財務を圧迫しているのは、マスク氏が心血を注いだ最新設備の工場です。
一昨年における同社の設備投資額は12億8000万ドルでしたが、昨年は一気に増えて34億ドルを突破。関係者の中には、マスク氏が理想を追いかけるあまり、生産ラインの設備が過剰になっていると指摘しています。
これらの設備投資資金の大半は借り入れで調達されており、その分だけ財務体質は悪化しています。同社は保有する車両リース債権の証券化などで資金捻出を試みており、新たな資金調達は必要ないとの見通しを示しています。
この話が本当であれば、一安心というところですが、本当にキャッシュフローが改善したのかを確認するためには、次の四半期決算を待つ必要があるでしょう。