有識者はたいていの場合、利害で発言している(学者編)

加谷珪一の情報リテラシー基礎講座 第14回

 何かを決める際に他人の意見を参考にすることがあると思いますが、ここには落とし穴がたくさんあるので注意が必要です。特にメディアなどで見解を述べている有識者の主張は、その背景をよく理解した上で受け止めることが重要です。

有識者たいていの場合、利害に基づいて発言している

 有識者の中には、正確な情報をもとに、できるだけ客観性が保てるよう吟味して発言する人もいます。しかし、こうした人はどちらかというと少数派といってよいでしょう。有識者の発言の裏には、本人の利害や願望が大きく関係していることがほとんどです。

 有識者の意見を参考にする場合、もっとも重視する必要があるのは、その人がどのような立場なのかということです。

 メディアなどで意見を述べる有識者にはいろいろな属性があります。主なところでは大学教授などの学者、評論家など論評を生業にしている人、ジャーナリスト、証券アナリストやエコノミストなど金融機関に所属している専門家、テレビタレント、コンサルタント、各業界の専門家などです。

 それぞれのタイプの特徴について説明していきます。

 まずは学者ですが、同じ学者でも、その知的背景は様々です。学者の発言を聞く際には、どのような経緯で学者になったのかについてよく考える必要があります。

 大学卒業後、大学院の博士課程まで進み、純粋に学術研究者としてキャリアを積んだ学者と、途中までは別のキャリアを持ち、学者に転身した人とでは背後の利害関係がまるで異なります。

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学者が重視するのは、自身が所属する学閥

 アカデミズムの世界で育った学者の場合、彼等がもっとも重視するのは、学会での立場です。学会は非常に狭いムラ社会ですから、そこで孤立してしまうと、あらゆる活動に支障をきたします。この縛りは、一般的なサラリーマン社会よりはるかに厳しいと思ってください。

 このため、純粋な学者の場合には、その学閥で主張されている考え方から逸脱して発言することはまずないと思って大丈夫です。逆にいうと、どんなテーマでも、その説にしたがって説明しますから、場合によっては、現実とかなり乖離することもあります。学者の発言は非現実的でよく分からないといった批判を耳にすることがありますが、たいていの場合、これが原因です。

 このようなタイプの識者の発言を聞く際には、そこでの学説に照らし合わせるとどう解釈されるのか、という程度に割り切って話を聞くのが賢明でしょう。

 例えば、アベノミクスについて意見を述べる際、いわゆるリフレ派と呼ばれる貨幣数量説や合理的期待仮説を基盤とする専門家からは、量的緩和策に関して批判的見解が出てくることはまずありません。

 一方、貨幣数量説に立たない学者の場合には、基本的には量的緩和策について否定的な見解を示すことがほとんどです。その人が属する学閥を見れば、発言する前から、何を言うのかほぼ予想できますから、彼等の発言に対して感情的になってもあまり意味はないのです。次回以降では、それぞれの有識者の特徴について順次、解説していきたいと思います。

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