日本社会はこのところ急速に貧困化が進んでいると言われますが、貧困の程度を示す指標としてよく使われているのが相対的貧困率です。今回は相対的貧困率について考えてみたいと思います。
所得が真ん中の人の半分以下を貧困と定義
相対的貧困率は、可処分所得が中央値の半分以下の人の割合を示す指標です。所得が高い人から順番に並べていき、ちょうど真ん中に順位になる人を基準に、そこから半額以下の所得しかない人を貧困状態にあると定義したものです。
ちなみにここでいうところの可処分所得とは、実際に得た所得から、所得税、住民税、社会保険料などを差し引いたものです。つまり本当に使えるお金がいくらなのかという話です。
さらにいえば、単身世帯なのか、結婚しているのか、子供がいるのかによって、同じ所得でも状況が異なります。例えば年収600万円で3人家族の世帯と年収200万円の単身世帯では、1人あたりの年収が同じでも生活水準が同じとはいえません。
このため、相対的貧困率を算出する場合の所得については、世帯人員数で調整した数値が用いられており、これを等価可処分所得と呼びます(世帯の可処分所得を、世帯人員の平方根で割って算出します)。
したがって厳密に相対的貧困率を定義すれば「等価可処分所得の中央値の半分に達していない人の割合」ということになるわけです。
日本の相対的貧困率はかなり高い
2015年度における等価可処分所得の中央値は245万円でしたから、その半分である122万円以下が貧困と定義されることになります。この割合が相対的貧困率ということになり、2015年度の数字は15.6%でした。2015年における日本の人口は1億2700万人でしたから、ざっと計算すると約2000万人が貧困状態にあります。
この数字は先進各国の中では突出して高くなっています。ドイツやフランスなど欧州各国は数%台というところがほとんで、主要先進国の中でこれほど貧困率が高くなっているのは日本と米国だけです。
欧州の中でもスペインやイタリアなど、経済的に問題を抱えていた国の貧困率は高くなっていますし、韓国も日本に近い水準です。苛烈な自己責任国家である米国を除けば、貧困率は経済的な体力差に起因すると考えてよいでしょう。
相対的貧困率は実態と乖離しているとの批判もありますが、今のところ、この相対的貧困率ほど貧困の状況を的確に示す指標はありません。また現実問題として、年間123万円以下の所得では普通の生活は成り立ちません。相対的貧困率が実態と乖離しているというのは、そうあって欲しいという思いが作り出した、根拠のないイメージといってよいでしょう。
日本はかつて「1億総中流」というキーワードがあったことからも分かるように、貧富の差が少ない暮らしやすい国と思われてきました。しかし1980年代の段階ですでに10%以上の貧困率があり、年々、その数字は上昇しています。日本はかなりの格差社会であると解釈するのが自然です。