日本経済に忍び寄るインフレの足音。デフレ脱却=好景気とは限らない

 日本はデフレ一色というイメージでしたが、ジワジワとインフレの足音が近づいています。景気が回復しない中でのインフレは消費者にとっては厳しい展開となる可能性もありますから注意が必要です。

多くの消費者はステルス値上げを見破っている

 総務省が3月23日に発表した2月の消費者物価指数は、代表的な指標である「生鮮食品を除く総合(コア指数)」は前年同月比でプラス1.0%となりました。2017年の年初はわずか0.1%でしたから、かなりの上昇といってよいでしょう。

 この指数には生鮮食品が入っていないのですが、生鮮食品を含む総合指数の上昇率はすでに1.5%に達しています。もしこのペースが続いた場合、物価が上がったという実感はかなり強くなるはずです。

 実は、昨年あたりから徐々に物価は上がり始めていました。しかし労働者の実質賃金はむしろ下がっていましたから、消費者の財布は厳しい状態です。値上げによって商品の売れ行きが低下することを危惧したメーカー各社は、価格を変えずに内容量を減らすといった、いわゆるステルス値上げを行ってきました。

 しかしながら多くの消費者は、この事態に気付いています。ステルス値上げは、かなり姑息な手段であり、メーカーにとっても本来はあまりよい影響をもたらしません。それにもかかわらず、こうした手法が蔓延しているというのは、一種の異常事態と考えた方がよいでしょう。

 しかし、価格の誤魔化しもそろそろ限界に来ており、この4月には多くの製品で値上げが実施されました。このまま行けば、さらに物価が上がるという状況になりそうです。

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失業率も低下が進んでおり、物価が上がりやすくなっている

 物価上昇の兆候は失業率にも表われています。経済学の分野では、失業率が下がると物価が上がるという関係性が知られています(フィリップス曲線)。日本は失業率が物価に影響しにくい国といわれていますが、それでも失業率が下がれば、物価が上がりやすくなるのは同じです。

 2018年1月の完全失業率(季節調整値)は2.4%と昨年12月の数字を0.3ポイントも下回り、24年ぶりの低水準となりました(参考記事「失業率の急低下がもたらすもの」参照)。あまりに下落が大きかったので、統計上の誤差ではないかとの見方もありましたが、2月の失業率も2.5%とやはり低い水準でした。人手不足が深刻になっており、失業率が下がっているのは間違いなさそうです。

 これだけ材料が揃ってくると、日本でもインフレが発生するのは時間の問題かもしれません。

 日本ではデフレが諸悪の根源とされ、デフレを脱却すれば景気がよくなると言われてきました。しかしインフレやデフレというのは、モノの価値と貨幣の価値の関係を示しているだけであって、それ自体に何か意味があるものではありません。

 一般的に景気がよいと物価が上がりやすいので、インフレ=好景気というイメージがありますが、不景気でインフレになるケースもありますから、インフレになれば景気が回復するとは限らないのです。したがってデフレを脱却したからといって、単純に生活が豊かになるとは考えない方がよいでしょう。

 若い人はよく知らないかもしれませんが、景気がよくない状態の場合、庶民にとってはデフレよりもインフレの方が圧倒的に生活が苦しくなります。この現実はしっかり頭に入れておいた方がよいでしょう。