加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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パナソニックとソニーの差が意味すること

 

 パナソニックとソニーが好対照な状況となっています。パナソニックは2014年3月期の決算で、何とか業績を回復することができました。
 一方のソニーは、不振のパソコン事業をファンドに売却しましたが、来年度の決算も赤字が見込まれる状況です。両者の違いはどこにあるのでしょうか?

選択と集中を捨てたパナソニック
 パナソニックの2014年3月期の決算は、売上高が前年比6%増の7兆7365億円、当期利益は1204億円となり、3期ぶりに黒字転換を果たしました。十分とはいえませんが赤字体質からはほぼ脱却したと考えてよいでしょう。

 一方のソニーは、依然として厳しい状態です。売上高は7兆7673億円と前年比で14.3%の増収ですが、当期利益は1284億円の赤字です。プレステ4やスマホの販売は好調ですが、売上増大は為替の影響が大きく、収益体質になったとはいえない状況です。

 同社は不振のパソコン事業をファンドに売却し、VAIOは別会社としてスタートすることになりました。しかし同社にはテレビ事業の立て直しというもうひとつのカベが立ちはだかっています。

 パナソニックが業績を回復したのは、円安の効果も大きいのですが、それだけではありません。各部門でこまめにリストラを実施し、経費削減を進めたことが功を奏しています。

 同社は一時、選択と集中をキーワードに特定分野にリソースを集中する戦略を採用しました。プラズマ・ディスプレイに多額の投資を行ったり、経営危機に陥っていた三洋電機を吸収合併し、ソーラー事業や電池事業を強化する方針も打ち出していました。

 しかし、これらはすべて裏目に出てしまい総額1兆5000億円もの巨額赤字の原因になってしまったわけです。
 同社は、2年かけて三洋電機を実質的に解体し、プラズマ・ディスプレイからは完全に撤退しました。おかげで同社には、主力商品が存在しなくなるという状態になりましたが、各部門でこまめに利益を確保し、全体としてはそれなりの利益体質に変わったわけです。

panasonic

今の日本では何でも屋が一番強い
 要するにパナソニックは何でも屋であり、それほど大きくは儲かりませんが、各部門で少しずつ利益を上げる会社になっています。一方、ソニーは今でも、特定分野にリソースを集中させ、そこで大きな利益を上げようとしているのですが、その戦略が空回りした状況にあります。

 グローバルな経営スタイルという意味では、パナソニックの現状はあまり褒められたものではありません。本来は、強いところに特化し、弱いところは切り捨てることで利益を最大化できるからです。

 しかし、パナソニックは現在の日本経済の状況を非常によく体現していると考えられます。現在の日本ではパナソニックのようになるしか生きる道はなく、生き残っている会社は、程度の差こそあれ、皆がパナソニックになっているからです。

 あるファンドマネージャーがコラムでこんなことを書いていました。最近地方に行くと、名刺の裏にたくさんの事業が列記してあって、何が本業なのか分からない人が増えてきているそうです。

 経済が縮小し、仕事が次々になくなっていく中、大手が撤退したビジネスをうまく引き継いだり、何社もの代理店になって、数少ない客にいろいろと商品を売り込むことができた企業だけが、何とか生き延びているというわけです。

 パナソニックはまさにこうした地方の何でも屋的な零細企業が巨大になったようなものです。日本はバブル崩壊後、10年くらいまでの間であれば、本格的に体質転換し、米国のような知識産業国として、世界でリーダーシップを取れる国になれた可能性がありました。

 しかし、体質転換を先延ばしした結果、日本は完全に他国に遅れを取ってしまいました。今から、新しい産業分野でリーダーになることはかなり難しいと考えるべきでしょう。
 これからは、あまりカッコよくありませんが、最先端を追い求めるのではなく、ローテクで、コツコツと地道に稼げる道を模索することが重要となりそうです。

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