住宅情報サイトの運営会社が行ったアンケート調査によると、日本人の約9割が、生まれ変わってもまた日本人になりたいそうです。この結果自体は非常によいことなのですが、中身をよく見ると、少々気になる点があります。
日本人の誇りは「治安」と「食」?
住宅情報サイトを運営するオウチーノの関連会社であるオウチーノ総研は6月、日本人の誇りに関するアンケート調査の結果を発表しました。
それによると、約9割近い人が、生まれ変わっても日本人になりたいと答えています。生まれ変わったら日本人になりたくないという人は、わずか10.6%しかいません。
ほとんどの人が日本人としての生活に満足し、誇りを持っているということなのですが、気になるのはその理由です。
生まれ変わっても日本人になりたいと答えた人に、その理由を聞いたところ、その理由のトップは「治安、安全性」で64.6%になっています。二番目が「食」で43.4%です。
文化や技術、歴史といった項目は10%程度で、インフラ、経済、教育、交通といったあたりは、わずか数%しかありません。
そもそもアンケートの調査項目に、治安や食を加えてよいのかという問題もあるのですが、それはともかくとして、非常に気になるのは、断トツのトップとなっている2つの項目が、日本では維持されなりつつあるという現実です。
確かに日本の犯罪発生率は他の先進国よりも低いことが知られています。しかし、犯罪とは人が作り出すもので、自然に発生するものではありません。
つまり犯罪を犯罪として何件認知したかによって数字は大きく変わってくるのです。つまり警察が正式に犯罪として認知しなければ、犯罪にはならないわけです。
日本の場合には「警察沙汰にするしない」といった言葉があるように、インフォーマルな形で正式な犯罪にならずに処理されているものも少なくないと考えられます。
また窃盗犯の場合には検挙率は2割程度しかありません。日本は治安がよく安全だというのは、必ずしも正しいかどうかは分からないのです。
治安と食の安全はこの先、担保されない可能性が高い
また日本の犯罪発生率が低いのは、ムラ社会的な共同体で相互監視が厳しいことが大きな要因であったともいわれています。
しかし、この社会システムは大きく変わろうとしています。日本は慢性的な人不足になっており、政府は大量の移民を受け入れる方針を明らかにしているからです。
移民が犯罪者であるというのはまったくの偏見なのですが、移民が増えると、犯罪が増えるというのは事実です。
様々な価値観や人種の人が混在するようになってくると、ムラ社会的な秩序は消滅します。そうなってくると、元からいた日本人も含めて、個人が自由に活動するようになり、結果的に犯罪に走る人も増えてくるという理屈です。
こうした多国籍なグローバル社会では、ムラ社会とは別のルールや治安維持の方法論が必要となってくるのですが、こうした新しい時代のルールに多くの人がすぐに馴染めるとは限りません。今までのようなムラ社会的な感覚における治安の良さというのは、確保されない可能性が高いのです。
食についても環境は激変しています。昔は食の安全性も国によって大きく異なっていましたが、現在ではグローバル化が進んでいるため、国ごとの違いは少なくなっています。今の日本で、海外から輸入した食材を食べずに生活することは不可能でしょう。
日本でも米国でも中国でも、同じ国の中で、グローバルに流通する安価な食材を食べる人と、地域で流通する新鮮で高価な食材を食べる人にくっきりと分かれているのです。
つまり、食の安全は、どの国に住んでいるのかではなく、どのような暮らしをするのかにかかっているわけです。この傾向は今後、さらに顕著になってくるでしょう。
近い将来、崩壊するかもしれない、この2つの項目に、日本人の愛国心が集中しているのだとすると、それが担保されないと分かった時、日本人は自国に対してどう考えるのでしょうか?