効率化だけではダメな理由

加谷珪一の知っトク経営学 第4回
【効率性 vs 有効性 フォードとGMの対比】

 テイラーの徹底した管理手法は、米フォードが導入した大量生産方式として結実します。フォードは画一的な大量生産方式で大成功を収め、トップの自動車メーカーとしての地位を築きました。

 しかし、無敵と思われたフォード社に強力なライバルが現われます。ビュイック社を中心に、20社以上の自動車メーカーが合併して出来上がったGM(ゼネラル・モーターズ)です。GMはフォードとは全く異なる考え方を採用し、最終的にはフォードを抜いて世界最大の自動車メーカーとなりました。

 GMが大成功する要因となったのは、単純に効率性だけを追わず、有効性という部分にも目を向けたからです。GMの成功によって経営学は組織についても研究対象とするようになりました。

効率化が有効なのは需要がある時だけ

 効率を追求することは極めて重要なことです。職場の中でも、「効率が悪いぞ」「効率よく仕事をしろ」といったセリフが飛び交っていることでしょう。しかし、効率を上げるという工夫がうまく作用するためには、ある条件をクリアしている必要があります。

 それは、製品やサービスに対して十分な需要が存在していることです。

 常に大量の受注が舞い込んでいる状況であれば、ひとつのタスクをどれだけ素早く実施できるのかで、最終的な処理量は大きく変わってきます。こうした場面では、効率性を追求することは最大限の効果を発揮することになります。

 しかし、製品やサービスに対して、常に十分な需要が存在しているとは限りません。来た注文を効率よくこなすことよりも、顧客そのものを探し出すことが難しいという局面もあるわけです。
 効率の良さを生かすためには、製品やサービスが市場で求められているニーズとしっかりとマッチしている必要があり、これを示すのが有効性という概念になります。

 企業が成功するためには、市場で求められるものをしっかりと認識し、その上で効率性を追求して、ムダのない動きをしなければなりません。

 しかし現実の企業経営においては、有効性と効率性の両方を追求することは意外と難しいのです。ニーズが十分にある状態でしたら、効率性を追求することは可能ですが、こうした組織が需要の低迷に直面すると、どう対応してよいか分からなってしまいます。

かつてのGM本社ビル Photo by Don Harrison

事業部制はこうして始まった

 一方、市場ニーズへの対応が上手な企業が、効率性を追求することで高収益を上げられるとは限りません。アイデアが先行し、コスト高になっているケースは少なくないのです。

 フォードが大成功することができたのは、それまで安い自動車というものが存在しなかったことで、圧倒的な需要を確保することに成功したからです。一方のGMはフォードほどの効率化を実現できず、フォードには水をあけられていました。
 しかし、大衆に自動車が普及してくると、消費者のニーズは多様化してきます。ここでフォードとGMの関係も変化してくることになりました。

 GMは、顧客の好みに合わせて多くの車種を用意し、モデルチェンジを繰り返す戦略を採用しました。顧客の要望に細かく対応しすぎると、当然、事業者としての効率性は低下します。しかし、ニーズが多様化している時には、効率を犠牲にしても、顧客ニーズを優先した方がよい場合もあります。当時のGMは、まさにそうしたタイミングだったわけです。

 GM戦略は市場のニーズにピッタリとマッチし、生産性ではフォードに追い付かなかったものの、フォードを抜いて、世界最大の自動車メーカーとなりました。GMのこうした手法を真摯に学び、半世紀後にはGMを脅かすまでに成長したのがトヨタ自動車です。
 
 GMの新しい戦略は、アルフレッド・スローン(1875~1966)という名経営者によって実現しました。スローンの取り組みは、やがて事業部制という形で、現代経営のひとつのスタンダートなります。次回は、組織論が戦略論として発展した経緯について解説します。

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