子育て世代の女性が職場を離れることで、30代の働き手が減少するという、いわゆる「M字カーブ」が急速に解消されています。女性の就業率が上がったことはよいことなのですが、別の問題も浮上してきました。それは人手不足のさらなる深刻化です。
M字カーブの存在は経済にとってマイナス
総務省の最新の労働力調査によると2017年における、女性(30~34歳)の労働力人口は264万人となりました。人口に占める割合も75.2%と過去最高を記録しました。
日本では現在、約3000万人の女性が働いていますが、働く女性の割合は年齢によって違いがあります。
男性の場合、働く人の割合(厳密には労働力人口比率)は世代を通じてほとんど変わりませんが、女性の場合には、結婚適齢期といわれる25歳以降で著しく減少するという傾向が見られます。これは結婚や出産を機に仕事をやめる女性が多いことを示しています。
かつてはこうした傾向は特に問題視されませんでしたが、最近は状況が変わってきました。
日本経済は人口減少から極端な人手不足に陥っており、働き手が絶対的に不足しています。より多くの人に働きに出てもらわないと、企業が生産を維持できなくなっているのです。
日本社会は基本的に移民を受け入れていませんから、労働者として期待されるのは日本人だけです。高齢者の就業率を上げるのは、体力的な問題もありますから、現実的にはなかなか難しいでしょう。そうなってくると、日本において労働力人口を増やすためには、仕事をやめた女性に職場に復帰してもらう以外に方法がありません。子育て支援が叫ばれているのもこうした理由からです。
人手不足の問題がさらに深刻化している?
30代女性の就業率はなかなか上がらなかったのですが、ここ2年で状況が大きく変わりました。米国の好景気に引きずられて多少、景気が回復したことに加え、生活が苦しい世帯が増え、仕事に戻る決断をした女性が多かったと考えられます。
人手不足に陥っている日本経済の現状を考えると、本来ならよいニュースですが、そうとも言えなくなってきました。先ほど説明したM字カーブはほぼ解消された状態にありますが、これは言い換えれば、新たに労働市場に出てくる女性はいなくなったということでもあります。
一方で人手不足はまったく解消されていませんから、今後も人手が足りないという問題が継続することになるでしょう。
人手不足が深刻化すると企業の人件費が上昇することになります。労働者の賃金が上がるので一見、良いことのように思えますが、好景気で賃上げになるわけではありませんから、企業はこの分を製品価格に転嫁してくるでしょう。そうなると、物価も上がってしまいますから、せっかく賃金が上がっても消費は低迷することになります。
もし景気が回復しないまま賃金上昇による物価上昇が過度に進んだ場合、不況下におけるインフレ、つまりスタグフレーションに陥る可能性も出てくるわけです。企業はできるだけ早期に、AI化やロボット化など、人手に頼らない業務にシフトしていく必要があるでしょう。