マネジメントという仕事の本質は何か?

加谷珪一の知っトク経営学 第2回
【ファヨールの管理論とPDCAサイクル】

 前回、解説したように、テイラーは企業の世界に科学の概念を持ち込むことに成功しましたが、彼の関心はひたすら生産現場の業務に向けられていました。現場の業務を最適化することができれば、経営全体もうまくいくと考えていたわけです。

 しかし企業の経営はそれだけではありません。営業や財務など、もっと広い視点が必要となります。テイラーが考え出した管理という概念をもう少し広い範囲に適用させたのがファヨール(1841~1925)です。ファヨールは、マネジメントそのものを重要な業務と位置付け、管理者の仕事というものを明確にしました。

ファヨールの管理論とPDCAサイクル

 組織の運営にマネジメントが必須ということであれば、その役割は非常に重要なものであるはずです。ファヨールは、企業活動というものは以下の6つの機能で構成されると考えました。

 ①技術活動(生産、製造、加工)
 ②商業活動(購買、販売)
 ③財務活動(資金調達・運用)
 ④保全活動(財産と従業員の保護)
 ⑤会計活動(B/S、原価計算、等)
 ⑥管理活動(予測、組織化、指令、調整、統合)

 この中で①から⑤までは、人だけでなくモノやお金も関係しています。しかし⑥の管理活動だけは、もっぱら人が対象となる仕事といってよいでしょう。

 ファヨールは、管理活動はあらゆる業務の中で特別なものであり、他の機能とは質的に異なっていると考えました。その結果、管理活動というものを上位に位置付け、組織全体を統括するものと定義したのです。

Copyright(C)Keiichi Kaya

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管理業務の概念はやがてPDCAサイクルへと発展した

 またファヨールは、組織を階層構造として認識し、それぞれの階層における管理活動の比率についても言及しています。現場レベルでは85%が技術活動に割かれることになり管理活動はわずか5%程度ですが、階層が上がるにつれて管理活動の割合が上昇していきます。トップマネジメントになると、管理活動は50%を突破します。

 ファヨールは、こうした管理業務をうまく遂行するためには、計画、組織、命令、調整、統制という5つの流れが必要だと定義しました。そして5つの流れは循環的に行われるべきだとの見解を示しています。ファヨールのこうした考え方は、やがて経営学の中で大きな位置を占めるようになり、最終的にはPDCAサイクルという形で結実しました。

 PDCAサイクルとは、言うまでもなくPLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACTION(改善)を繰り返すことで、業務の品質を上げていく手法です。さらに言うと、こうしたサイクルを通じて、ビジネスの本質を見極めるという効果もあります。
 
 PDCAは単に業務を改善するだけのものと思っている人が多いのですが、そのベースには、管理の重要性という概念が含まれているのです。逆にいえば、常にPDCAを回しながら、業務あるいは組織全体の価値を上げていくという行為が伴わない仕事はマネジメントとは呼びません。

 ただ指示を出したり、部下を評価しているだけでは管理者でないのです。このあたりがよく飲み込めていない管理職や経営者は意外と多く、企業の業績にマイナスの影響を及ぼしています。

 次回は「ホーソン実験」を取り上げ、モチベーションと成果の関係について解説します。

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