ROEの具体的な活用方法

加谷珪一の投資教室 第18回

 前回はROE(株主資本利益率)の基本について解説しました。今回は投資の現場における具体的なROEの活用方法について説明します。

 一般的にROEが高い企業は投資家からの評価が高いことが多いですから、ROEはしばしば優良銘柄の選別に用いられます。しかしROEが高い企業の株が買われるというのは、ほとんどの投資家が知っていますから、これだけを使って銘柄を選別するのは避けた方が賢明です。

 ROEが高い企業は、すでに多くの買いが入っている可能性が高く、場合によっては適正価格を上回って株価が形成されている可能性もあります。高ROE銘柄を探して買いを入れても、その時が株価のピークだというケースは少なくないのです。

 したがってROEを投資に応用する時には、企業の比較などに用いるのがよいでしょう。

 似たような業態で、同程度の利益率の企業があるとします。片方の会社は自己資本が厚く、その分、ROEが低くなっています。もう片方の会社は、自己資本が薄く、ROEは高いという結果になっていました。

 この時、両社については2つの考え方があり得ます。

 ひとつは、高いROEの会社は、株主価値の向上について意識が高いので、今後も引き続き業績が伸びるという考え方。もうひとつは、これまでROEが低かった企業の方が、今後の資本政策の改善余地が多いので、むしろ株価が上がりやすいという考え方です。


 オーソドックスに考えれば、前者の株を買うということになりますが、先ほど説明したようにROEが高い企業はすでに株価も高騰している可能性が捨てきれません。PERなどとの関係から、思った程、高い評価を得ていないことが確認できるのであれば、よい投資先になるでしょう。

 前回、ROEとPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)には、PBR=PER×ROEという関係が成立するという話をしました。

 PBRが低い企業でも、ROEは普通で、PERが低いというところもあれば、逆にPERが高く、ROEが低い企業もあります。PERが低く、ROEが高い会社は、本当は利益体質なのに、それを市場が評価していない証拠であり、株価の上昇が期待できることになります。
 一方、PERが高く、ROEが低い企業は、市場で過大に評価されているということになりますから、これ以上の株価上昇は望めないかもしれません。
 
 ROEが低い企業は通常は避けた方が無難ですが、PER、ROEともに低い企業であっても、市場からの圧力によって生まれる変わることがあります。こうした銘柄の株価上昇余地は意外と大きいので、場合によっては狙い目の投資となるでしょう。

 また、ROEは自社株買いとの関係からも議論されることがあります。

 ある企業が自社株買いを実施すると、株数が減ってEPS(1株あたりの利益)とROEが増加し、見かけ上のPERが低下することになります。PERの低下によって割安感が出てますから、一般的に自社株買いを行う企業の株価は上昇しやすくなります。

 ただ、先ほどの式を考えると、株価が上がれば必然的にPBRも上がってくることになります。いくらPERが割安だったからといって、PBRの過度な上昇を無視してよいわけではありません。単なる自社株買いによるROE向上策には限界があるということも理解しておいた方がよいでしょう。

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