経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資教室

株価は何が根拠になっているのか

加谷珪一の投資教室 第10回

 財務諸表に対する考え方が一通り分かったところで、今度はファンダメンタル分析の具体的なやり方について解説したいと思います。

 簡単に言ってしまうとファンダメンタル分析は、財務諸表を使って企業の現状を分析し、理論的に計算される水準と比較して、株価が割高なのか割安なのか見極める手法ということになります。

 株価(つまり企業の価値)が割高なのか割安なのかを判断するためには、企業の価値がどこから生じているのかについて理解しておく必要があるでしょう。
 現代の投資理論においては、企業の価値というのは、その企業が将来生み出す利益を現在の価値に換算したものと定義されています。ここは非常に重要ですからよく覚えておいてください。

 例えば、今、市場で1000円の株価が付いている銘柄があるとします。

 その株からは毎年50円の配当が得られるとしましょう。果たしてあなたはこの株を1000円で買うでしょうか? モノの値段に対する考え方は様々ですから、高くて買えないと考える人もいれば、適正だと思う人もいるかもしれません。

 しかしながら、もし、この株が1万円なら買う人はほとんどゼロである可能性が高いですし、逆に100円なら多くの人が購入するはずです。






 

 もし1万円で株を買ってしまえば、配当で利益を回収するのに200年かかってしまいます。逆に、50円の配当が得られる株式が100円なら、2年で元本を回収でき、その後の配当は丸々利益となります。こんなおいしい話はありません。

 最終的に500円であれば妥当なのか、それとも2000円なら妥当なのかは人それぞれですし、株価が、すべて配当との兼ね合いで決まるわけでもありません。しかしながら、株価というのは、おおよそ、このようなメカニズムで決まってくるものなのです。

 つまり、いい銘柄を見つけるという行為は、理論的に考えた株価に対して現実の株価が安くなっている銘柄を見つけることに他なりません。割安な株を探して投資するというのは、このような意味になります。

 もっとも、買う対象となるのは安い株だけではありません。先ほど、配当は50円と説明しましたが、来年は100円、再来年は500円と増大するならどうでしょうか?
 もしそれが本当であれば、うまくいくと数年で投資金額を回収することができます。つまり、今後、利益が伸びていくと予想される銘柄であれば、株価が高くても購入できるわけです。

 ファンダメンタル分析というのは、計算した理論的な株価に対して割安な銘柄があるのか、逆に、今後の利益予想から、まだ株価が上がると思える銘柄があるのかを探す手法です。ファンダメンタル分析には様々な手法がありますが、最終的にはこの2つに収束すると考えてください。

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