経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. 投資教室

PERは何を表わしているのか

加谷珪一の投資教室 第11回

 株価の割安、割高をもっともシンプルに表す指標として知られているのがPER(株価収益率)です。PERは、企業の株価を1株あたりの利益(EPS)で割って計算することができます。

 つまり、株価が今の利益の何倍の水準になっているのかを示した指標であり、言い換えれば、株価が何年後の利益まで先取りしているのかを意味しています。

 つまり株価と時間には密接な関係が存在してということなのですが、これは投資を行う上で重要な視点です。

 企業は、お金を使って事業を行い、利益を生み出すための装置です。そうであればこそ、財務諸表を使って、1年間でどれだけの利益を上げたのか、正確に把握する必要が出てくるわけです。

 今年の利益に加えて、来年以降、どのくらい利益を上げられるのかも重要なテーマとなります。

 例えば、毎年1億円の利益を上げている会社があると仮定しましょう。その会社を買った投資家は、理論上、毎年1億円を手にすることができるはずです。そのような会社を元の持ち主は1億円で手放すでしょうか?

 そんなことはないはずです。これは先ほどの配当の話とまったく同じ仕組みといえます。

 ただ持っているだけで毎年1億円の利益が転がり込んでくる資産を1億円で売るバカはいません。しかし、値段が10億円ならどうでしょうか?10億円ということは10年後の利益まで織り込んだ値段ということであり、PERに当てはめれば10倍ということになります。これなら人によっては売るという決断をするかもしれません。






 

 会社の長期的な成長を確信している人なら30億円でなければ売らないと考えるかもしれませんし、逆に事業がすぐに衰退すると思っているなら5億円で売ってしまった方がよいでしょう。同じ利益でも、会社の値段は大きく変わってくることになります。

 PERが将来の利益を織り込んでいるということには、このような意味があります。
 
 現実の株式市場では、PERが10から20倍程度というのが常識的水準といってよいでしょう。つまり10~15年後くらいまでは、同じような状況が継続すると考えているわけです。

 しかしながら、すべての企業が同じようなPERではありません。ネット企業のように急成長すると期待されている銘柄はPERが100倍になることもしばしばです。こうした企業の株価は、急成長するという期待に支えられているわけです。

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