加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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7~9月期のGDPは予想通りマイナス成長。気になるの名目値のゼロ成長

 

 事前の予想通り、2015年7~9月期のGDP(国内総生産)がマイナス成長となりました。2四半期連続のマイナスですから、市場では景気後退が強く意識されることになります。

設備投資が落ち込み消費を打ち消す
 内閣府は2015年11月16日、2015年7~9月期のGDP(国内総生産)速報値を発表しました。物価の影響を除いた実質でマイナス0.2%、年率換算ではマイナス0.8%でした。前期はマイナス0.3%でしたから、2四半期連続のマイナス成長ということになります。景気後退が意識されるのは確実とみてよいでしょう。

 GDPの6割を占める個人消費は比較的堅調でした。前期はマイナス0.6%でしたが、今期はプラス0.5%に回復しています。しかし企業の設備投資が足を引っ張りました。民間企業の設備投資はマイナス1.3%と、前期(マイナス1.2%)からさらに落ち込んでいます。

 7~9月期がマイナス成長となることは、多くの関係者が事前に予想していました。GDPの基礎データとなる各種統計が低迷していたからです。
 企業の生産動向を示す鉱工業生産指数(季節調整済)は、7月がマイナス0.8%、8月もマイナス1.2%でした。9月はプラス1.1%でしたが、トータルすると生産がかなり抑制されていることが分かります。
 設備投資の先行指標といわれる機械受注も同じです。主要指標である 「船舶・電力を除く民需」(季節調整済み)は7~9月期の実績で前期比マイナス10%と大幅な落ち込みとなりました。
 今期は比較的、強気の設備投資計画を立てていた企業が多いと言われていますが、年度も後半に入っていることを考えると、通期でもあまり良い結果は得られないと考えた方がよいでしょう。

 設備投資の抑制については中国ショックが原因であり、一時的なものにとどまるとの見方もありますが、必ずしもそうとは限りません。
 中国は世界第2位の経済大国ではあるものの、あくまで、原材料を輸入し、付加価値の低い工業製品を輸出するという途上国型の産業構造です。最終的な製品の需要地は米国であり、米国は内需で経済を維持していますから、米国経済は中国ショックの影響をあまり受けない構造になっています。

 自動車など付加価値が高く、好調な米国経済の恩恵を受けるセクターは、今後も堅調な生産を維持できる可能性が高いと考えてよいでしょう。しかし日本には中国経済と関係が深いセクターも存在しており、これらは中国経済の影響をモロに受けてしまいます。

 企業の在庫は年初から積み上がる傾向が顕著となっており、生産や設備投資の抑制はかなり以前から始まっていた可能性も指摘されています。そうなってくると、中国ショックによる市場の混乱が一段落しても、すぐに生産が回復するとは限らないことになります。

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最終的に経済を動かすのは政府ではない
 さらに気になるのは、今期、名目GDPがゼロ成長となったことです。安倍首相はアベノミクス第2ステージとして、2020年をメドに名目GDPを600兆円にするという目標を掲げましたが、スタートから躓いてしまいました。

 実質の数字は物価に影響されますが、名目値は物価を考慮に入れる前のナマの経済規模を示す数字です。物価が上昇すると実質の成長率は低下しますが、名目の数字が伸び、物価上昇を差し引いてもプラス成長になるというのが本来の姿です。その意味で、経済規模の絶対値が大きくなっていないというのは問題といえるでしょう。

 政府は2015年10月16日、企業に設備投資を促すための官民対話の初会合を開催し、企業に対して設備投資を増強するよう強く要請しました。しかし企業は、市場の状況を見ながら設備投資を決めますので、政府に要請されたからといって簡単に投資額を増やすことはないでしょう。

 日本企業は完全に内向きになっており、現状維持を最優先しています。このためリスクをとって設備投資を増やす状況にはなっていません。日本企業の経営には株主ではなく従業員の意向が強く反映されますから、現状維持は多くの日本国民が望んだ結果と考えることもできます。

 政府は動きが鈍くなった経済を政策で後押しすることはできますが、経済の動きそのものを決めることはできません。最終的に経済を動かすのは、企業であり、消費者です。国民の意識が変わらないと、本当の意味で経済が回り出すことはないのです。

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