ネタニヤフ首相が米議会で演説。米国の中東政策は逆戻り?

 イスラエルのネタニヤフ首相が2015年3月3日、米議会で演説しました。イスラエルの首相が議会で演説すること自体は特別なことではありませんが、今回は少し状況が異なります。
 ネタニヤフ氏を米国に呼んだのは、ホワイトハウスや国務省ではなく議会・共和党だからです。オバマ大統領は、ネタニヤフ首相とは会談せず、数十人の民主党員は議会演説を欠席しています。米国の中東政策は、微妙な状況となっており、マーケットにも少なからず影響を与えそうです。

オバマ政権は基本的に中東への不干渉政策
 米国はイスラエルの建国以来、一貫してイスラエルを支持してきました。米国は、湾岸戦争以後、中東の問題に対して積極的に軍事力を行使してきましたが、あまりうまくいったとはいえない状況が続いてきました。

 その後、米国はイラク戦争を経て、リーマンショックを迎えたことで、国民の世論が大きく変化しました。中東に軍隊を送って政治的に干渉することよりも、自国の経済再生を最優先すべきだという考え方が強くなってきたのです。オバマ政権は、まさにこのような声を背景に誕生した政権といってよいでしょう。

 現在も、米国民の主な関心事は経済であり、外交問題への関心は低い状態が続いています。ピューリサーチセンターが昨年行った世論調査では、過半数の米国人が「米国は自国のことだけを考えればよく、他国に介入すべきではない」と回答しています。

 また今年1月に行われたオバマ大統領の一般教書演説でも、ほとんどの時間が国内問題に費やされていました。シリアの内戦問題やイスラム国の問題に対しても、オバマ大統領が一貫して消極的だったのはこのような理由からです。

 これに対して不満を募らせているのがイスラエルです。イスラエルは米国からの強力な支援がなければ中東で孤立してしまいます。
 このため、米国に対しては、常にアラブ諸国に対して強硬な姿勢を取るよう求めてきました。中東に関与したくないというオバマ政権の誕生は、イスラエルにとっては困った事態だったわけです。

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ベクトルが一時的には逆方向となる?
 一方、米国にも、従来通り中東に対して積極的に関与すべきだという世論が根強く残っています。特に共和党は、与党との対決姿勢を明確にするという観点から、オバマ政権の中東政策を厳しく批判しています。
 中東に対する積極関与派が今、もっとも懸念しているのが、イランの核開発問題であり、イスラエルとは完全に利害が一致します。

 今回のネタニヤフ氏の訪米は、こうした背景で実施されました。ネタニヤフ氏は演説で、イランとの協議について「核開発を阻止することはできない」と強く牽制しています。

 オバマ政権は今回の訪米に不快感を示しており、ネタニヤフ首相とは会談せず、議会演説においても民主党の議員約60名が欠席する事態となっています。

 国のトップが相手国の野党に対して強く肩入れするという行動は、内政干渉にもなりかねませんから、一般的にはタブーとされています。
 それにも関わらず、ネタニヤフ氏がわざわざこのような行動に出たのは、17日に行われるイスラエルの議会選挙という事情があるのですが、それにしても、オバマ政権に対する実質的な批判を行った影響は大きいと考えられます。

 ネタニヤフ氏は、米国のボストン・コンサルティング・グループの出身で、高いプレゼンテーション能力で知られています。今回の演説によって、米国内の雰囲気も少し変化した可能性があります。

 米国はシェールガス革命によって、世界最大級の産油国に転じており、中東に対する依存度が低下しています。基本的に米国と中東の関係は薄れていくというのが大きなトレンドなのですが、今回の一連の出来事によって、一時的には逆向きのベクトルが生じるかもしれません。

 少なくとも、次の大統領が決定するまでの間、米国の中東政策は不安定な状態が続くことになります。