加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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シャープが再び赤字転落。政府による産業支援策が遠因?

 

 業績が回復していると思われていたシャープが再び苦境に立たされています。黒字予想から一転、2015年3月期決算は300億円の赤字に転落する見通しです。シャープが赤字に転落した背景には、日本政府による産業支援策の存在があるといわれています。

シャープとジャパンディスプレイで顧客を奪い合い?
 シャープの業績が悪化したのは、同社の主力商品であるスマホ向け液晶パネルの販売が不振だったからです。

 スマホ向け液晶パネルを大量に購入してくれる企業はそれほど多くありません。iPhoneを製造する米アップル、Androidスマホを製造する韓国のサムスン電子、アップルから製造委託を受ける台湾の鴻海精密工業などが代表的な企業です。
 こうしたセット・メーカーに対して、日本企業、韓国企業、台湾企業が営業攻勢をかけ、しのぎを削っているわけです。

 こうした中、シャープがもっとも力を入れた売り先のひとつが、中国の格安スマホ・メーカー「シャオミ(小米)」でした。
 シャオミは創業からわずか5年で売上高1兆円を達成したベンチャー企業で、中国のスマホ市場では、サムスン電子を抜いて、シェア1位、2位を争うところまで成長しています。

 シャープはシャオミ向けに大口を契約を勝ち取ったかに見えたのですが、シャープにとって強力なライバルが登場します。それは、日の丸液晶メーカー「ジャパンディスプレイ」です。

 同社は、政府が日本の製造業復活を掲げ、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して2012年4月に発足させた企業です。政府系ファンドの産業革新機構を通じて、国費2000億円が投入されました。

 ジャパンディスプレイは、2014年3月にIPO(新規株式公開)しましたが、業績は芳しくありません。初値は公募価格を15%も下回り、上場1カ月後には、いきなり業績を下方修正する事態となってしまいます。さらに10月に入って2度目の業績下方修正を発表し、とうとう100億円の赤字に転落する見込みであることが明らかとなりました。

 同社は業績を回復させるため、懸命に営業活動を行い、とうとうシャオミから大口の注文を獲得します。しかし、その結果、シャープはシャオミ向けの注文を失い、結果として赤字に転落してしまいました。つまりジャパンディスプレイとシャープで食い合いをしてしまったわけです。

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政府の支援でマーケットは変えられない
 自由な競争の結果、シャープとジャパンディスプレイで顧客を取り合うことは何ら問題ないことなのですが、この場合、少し話が違います。ジャパンディスプレイは政府から巨額の支援を受けているからです。

 政府のジャパンディスプレイへの支援はいろいろな意味で問題があります。

 最大の問題は、ジャパンディスプレイという企業単体しか見ておらず、産業全体を俯瞰していないという点です。

 ジャパンディスプレイを設立するきっかけになったのは、日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業が不振だったからです。
 その理由はいろいろありますが、もっとも大きいのは、親会社であり、商品を買ってくれる顧客でもあった日立、東芝、ソニーといったセット・メーカーが、液晶パネルを使った最終製品の競争力を失ってしまったからです。

 そのような状態で国費を投入して企業を再生したとしても、親会社が買ってくれない以上、結局は、サムスン電子や鴻海精密工業など海外に売りに行かなければなりません。
 そこにはシャープも営業に行っているわけですから、お互いに値引き競争をする結果に陥ってしまいます。つまり、日本勢は自分たちで自分たちのクビを締めてしまったわけです。

 液晶デバイスという付加価値の低いコモディティ・デバイスで勝負する以上、韓国メーカーや台湾メーカーとの価格勝負になることや、シャープとジャパンディスプレイが競合してしまうことは避けられません。
 日立製作所、東芝、ソニーの3社はこうした状況があるからこそ、液晶事業を諦めたのであり、そこに政府が支援を加えても、グローバルな市場環境を変えることはできないのです。

 身も蓋もない話ですが、企業が競争力を付けるには、徹底的に競争するしかありません。政府が本来、取り組むべきなのは、特定企業を再生させることではなく、競争を邪魔しないよう市場環境を整備することです。

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