経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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事前予想通り与党は圧勝だが、今後の政治日程は厳しい

 2014年衆院選は、事前の予想通り自民・公明両党の圧勝となり、とりあえずアベノミクスは国民から信任されました。
 ただ、以前から分かっていたことではありますが、今後の政治日程はかなり厳しいというのが現実です。与党の勝利は株価にとっては基本的にプラスですが、日本経済が好転するのかは、何ともいえない状況です。

与党の議席数は変わらないが、定数削減なので割合は増加
 今回の選挙で自民党は291議席、民主党は73議席となりました。選挙前、自民党は295議席を確保していましたので4議席減らしたことになります。逆に民主党は62議席でしたので、11議席増やしています。ただ、公明党が4議席増やしましたから、与党は結果的に選挙前と同じ326議席を維持したわけです。

 ただ、今回の選挙では、「一票の格差」を是正するため、選挙区定数が「0増5減」となっています。つまり、衆院全体の定数が480から475に減らされているのです。総議席数が減っているわけですから、与党の占める割合は増加したことになります。

 民主党は議席を増やしたのですが、党代表の海江田氏が小選挙区に続いて比例代表でも落選するなど、大打撃となっています。アベノミクスは信任ということになり、安倍政権の長期政権化はほぼ確実な情勢と考えてよいでしょう。

 しかしながら、これで安倍政権が順風満帆かというとそうではありません。そもそも、今回の解散は、今後、厳しい政治日程が続き、支持率低下が予想されることから「解散するなら今のうち」という狙いで行われたものです。次の衆院選が行われる2018年までに、どれだけの政治日程をこなせるのかが課題ということになります。

senkyo2014

当面の注目点は法人減税、中期的にはさらなる追加緩和の有無
 市場がもっとも注目しているのは、やはりアベノミクスの成長戦略でしょう。短期的には、年末に取りまとめられる税制改正大綱がひとつのヤマ場になりそうです。
 税制改正大綱には法人税の減税が盛り込まれる予定になっているのですが、消費増税の延期で財源が不足しています。財務省としては、減税の幅をできるだけ縮小したいところなのですが、一方で外国人投資家や財界は大胆な減税を求めています。

 法人減税には賛否両論があるのですが、減税幅が小さかった場合には、株式市場に対してマイナスの影響が出る可能性があります。

 同時に安倍政権では、円安対策を含めた経済対策の取りまとめを行い、来年早々には補正予算として具体化することになります。ただ、これも財源との絡みがあり、大型の予算は組めないとの見方が大勢を占めています。そうなってくると、支出増加でとりあえず景気浮揚を図るというやり方には限界が出てきますから、どうしても金融政策に目が行ってしまうことになります。

 7~9月期のGDPがマイナス成長となり、10月以降の設備投資もそれほど活発ではありません。10~12月期のGDPもそれほどよい数字にはならない可能性が高いでしょう。また物価上昇も鈍化していますから、日銀に対してはさらに追加緩和に踏み切るよう圧力が高まる可能性があります。

 追加緩和を繰り返せば円安によって物価は上昇しますが、国民の生活は楽になりません。こうした状況の中で来年春の原発再稼働や統一地方選という政治イベントを迎えることになり、安倍政権としては非常に悩ましいところです。

 さらにいえば、来年には安保法制の整備という課題もあります。景気が失速する中、安保法制の整備を強行すると、国民からの批判が高まる可能性があり、時間をかけた議論が必要となるかもしれません。そうなってくると、来年の通常国会の日程は相当長引きそうです。

 ということで、選挙には勝ったものの安倍政権には課題山積という状況です。アベノミクス後退というシナリオは消滅したものの、景気や株価の動向が不透明である状況に大きな変化はありません。

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