加谷珪一の分かりやすい話

経済評論家 加谷珪一が分かりやすく「お金」、「経済」、「ビジネス」などについて解説します

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消費者物価指数があまり上昇していないのに、物価高になったと感じる理由

 

 このところ、インスタント食品、お菓子、バターなど、生活必需品が次々値上げされています。100円ショップにいっても、明らかに製品の質が下がったり、内容量が減っていることを実感できると思います。しかし、統計上の消費者物価は思った程、上昇していません。これはどういうことなのでしょうか?

消費者物価指数の伸び率は低下が続く
 総務省が発表している消費者物価指数は、代表的な指数である「生鮮食料品を除く総合(コア指数)」が前年同月比3.0%の上昇となっています。6月は3.3%、7月が3.3%、8月が3.1%なので伸び率は着実に低下している状況です。

 消費税による物価上昇は2%程度ですので、消費税の影響を除いた物価上昇率は 1.0%ということになります。2%の物価目標を日銀が掲げていることを考えると、あまり物価が上がっているとはいえません。

 先日、日銀が追加の量的緩和を行いましたが、主な理由は物価上昇に弾みをつけるためです。逆にいえば、このままでは物価が順調に上昇しないので、追加緩和に踏み切ったわけです。

 物価があまり上昇していないのに、生活実感として物価が上がったように感じるのは、消費税の影響と、もうひとつは物価上昇が均一でないことが原因です。

 経済学や行政の世界では、消費税の影響を除いた実質的な値上がり率を考えて物事を判断しますが、消費者にとってはそんなことは関係ありません。消費税の3%増税分はそのまま物価の上昇です。

 また、日銀の量的緩和策が、均一に作用を及ぼしていないことも、大きく影響しています。量的緩和策は、本来、物価全体の上昇を見込んだものでしたが、今のところ、物価に効いてきているのは円安の影響だけです。

 量的緩和策で円は急激に安くなり、輸入物価もそれにともなって上昇しました。原材料を輸入しているメーカーなどにとっては厳しい状況ですが、当初は、なんとか最終製品に価格を転嫁しないようこらえていました。
 しかし、さらに円安が進んできたことで、それも限界になりつつあり、最終製品の値上げが相次いでいるわけです。

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現状では輸入物価だけが上昇する事態は避けて通れない
 本来はすべての分野で物価の上昇が進み、それに伴って賃金も上昇していくというストーリーを描いていたのですが、残念ながらそのような状況にはなっていません。しかし、日本はすでに途上国ではなく成熟国家になっています。このため付加価値の低い製品は自国では生産せず、輸入に頼るようになっています。

 生活に密着した商品の多くが輸入財となっているため、わたしたち消費者には物価が上がったという感覚が強いのです。一方で全体としては、経済が活発になっているわけではありませんから、逆に値下げをしている商品やサービスもあります。このため全体の物価としては、それほどの上昇になっていないわけです。

 この傾向はさらに今後、顕著になってくる可能性が高いと考えられます。それは日銀がとうとう追加緩和を決定したからです。追加緩和を決定したということは、日銀が目標とする2%の物価上昇が実現するまで、徹底的に緩和を行うという意思の表れです。

 現在のところ、量的緩和策が日本国内の物価上昇に波及する経路は円安による輸入物価上昇しかありません。今後は輸入物価がさらに高騰し、やがては製品価格にそれが反映すると考えた方が自然でしょう。

 そうなってくると、ますます消費者の生活実感は苦しくなってしまいます。本来は、こうした金融政策に加えて、緩和策が効果的に作用するよう、産業全体の体質改善も実施していく必要があるといわれています。しかし、現状の日本では、こうした産業構造の改革は、実質的に民意で否定されている状況です。

 このため、金融政策のみに依存せざるを得ない状況となっており、これが続く限りは、輸入物価主導のインフレを避けて通ることは難しそうです。当面は財布のひも締めるしかなさそうです。

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