日本の出生数減少が当初の想定を超えて進んでいることが明らかとなりました。人口減少は市場の縮小など様々な悪影響を及ぼしますが、何より年金財政に対する影響が顕著です。
近い将来、年金の受給金額は2~3割の減額が必至と言われていますが、人口減少が想定よりも急ピッチだった場合、さらに減額幅が広がる可能性もあります。
年金財政がさらに悪化する可能性も
厚生労働省の人口動態統計によると、2019年1~7月の出生数は51万8590人となりました。これは、前年同期比との比較で5.9%のマイナスです。
日本の出生数は減少が続いていますが、そのペースは想定を上回っている状況です。このまま急ピッチの人口減少が進むと、将来の人口推定が大きく狂うことになるかもしれません。
人口が減少するとその分だけ国内市場が縮小しますから、経済にとっては不利になります。イノベーションなど、人口以外にも経済成長を決める要素はありますから、必ずしも人口減少が経済低迷につながるとは限りません。日本の場合、次々とイノベーションが出てくるという状況ではありませんから、人口減少は基本的にマイナスの影響が大きいと考えた方がよいでしょう。
特に大きいのが、年金財政に対する悪影響です。
日本の公的年金は賦課方式といって、現役世代から徴収する保険料で高齢者の年金を賄う仕組みですから、若い世代の人口が減ると、その分だけ年金財政が悪化します。
年金2000万円問題が大きな話題となりましたが、この金額もあくまで現時点における人口予想をもとにした数字です。人口減少が想定以上に進んだ場合、年金財政はさらに悪化する可能性もあるのです。
日本人は口で言うほど人口減少を懸念していない?
人口が減って大変だというのは、あちこちで聞かれる意見ですが、どういうわけか、日本では子育て支援がまったくというほど進んでいません。保育施設の拡充など、その気になれば、簡単にできる話ですが、一向に状況は改善していません。
社会一般の雰囲気も子育て優先とは正反対の状況です。いわゆるベビーカー論争に代表されるように、子ども連れで公共の場所に出て行くのは迷惑だという意見の方が多いようです。子どもを優先することに不快感を示している人が、人口減少に関して嘆く発言を行うなど、自己矛盾もかなり目立ちます。
出生数を増やすことは最終的に人口の増加につながりますが、これが現実に効果を発揮するまでには何十年も時間がかかります。その間については、移民受け入れといった方法なども考えられますが、日本人は移民についてもかなり消極的です。
総合すると、日本人は口で言うほど、人口減少について危機意識を持っていないと判断せざるを得ないでしょう。これは日本人の選択ですから仕方ありませんが、このままでは確実に市場は縮小し、さらに社会が貧しくなる可能性が高いと考えられます。
この状況を変えるには、日本人の意識そのものを変える必要がありますが、残念なことに、その兆候はまだ見られません。