諸外国と比較して日本の生産性が低いことはよく知られていますが、社会人があまりにも「学ばない」こともその原因とひとつとされています。話が単純だった昭和の時代には、あまり意識する必要はなかったかもしれませんが、これからの時代は新しい知識を積極的に身につけていかないと、個人としてもそして日本全体としても、諸外国に遅れを取ってしまうでしょう。
学ばない理由など考えたこともない?
リクルートワークス研究所の調査によると、日本のビジネスパーソンで自己学習している人の割合は33.1%でした。大半は何も学んでおらず、企業から学ぶ機会も与えられていません。
海外と比較すると状況はかなり深刻なようです。
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、「何らかの学位または卒業資格取得のために学習している」人の割合は加盟国中、最低でした。
学習しない理由についての設問では驚くべき結果が得られています。「学んでいない」という回答者に対して、学ばなかった理由を尋ねたところ「あてはまるものはない」という理由が51.2%と圧倒的なトップでした。
調査票には「仕事で忙しい」「費用負担が重い」「学んでも会社が評価してくれない」「すでに知識を身につけている」など多くの項目が用意されていますが、ほとんどの人がどれにも該当していません。「学習しない理由など考えたこともない」というのが正直なところなのでしょう。
転職が多いと学習機会も増える
学習しない傾向は学生時代から継続しています。学生時代に授業やテスト対策以外で、関心を持ったことについて自ら学習したという人は12.6%。残りはまったく学習していないか、テスト対策のみの学習だったと回答しています。
つまり日本では勉強というのはテスト対策として行うものであり、実利的なものという認識が強いと考えてよいでしょう。社会人の場合、勉強しても何かご褒美がもらえるわけではありませんから、勉強に対する意欲も薄れてしまうわけです。「いい会社」に入るという実利的な目的のために受験勉強に邁進する人も多いので、すべての力を使い果たしてしまったのかもしれません。
しかしながら「勉強=お金」的な姿勢は、これからの時代は不利に働きます。
ネットの普及で単純な知識の価値は低下しており、むしろ複数の知見をうまく組み合わせることで新しい知見を生み出す能力が求められており、こうした時代においては、楽しみながら学習を継続していく姿勢が重要となります。
ちなみに、先ほどのリクルートの調査では、転職経験と学習の継続について、転職経験が多い方が学習を継続的に行うという結果も出ています。
積極的にキャリアを構築する意識さえあれば、学習は自動的に付いてくるわけです。雇用についてもっと柔軟に考えることができれば、一連の問題も大きく前進するでしょう。