近いエリアに集中出店するという、いわゆるドミナント戦略を得意してきたコンビニ最大手のセブン-イレブンが岐路に差し掛かっています。
24時間営業をめぐる加盟店オーナーの対立など、一連の混乱の責任を取る形で、同社の古屋一樹社長が退任しましたが、今後のセブンの経営はどうなるのでしょうか。
店舗が増えすぎて、1店舗あたりの売上高が伸び悩み
このところコンビニの24時間営業をめぐって国民的な議論がわき起こっています。きっかけとなったのは、大阪府にある加盟店が、深刻な人手不足から営業時間の短縮を実施し、契約内容をめぐって同社と対立したことです。
当初、セブンは24時間営業を堅持する方針であり、古屋社長は強気の発言を繰り返していました。一方で同社は全国の10店舗において、営業時間を短縮する実験を開始しています。24時間営業堅持に邁進していた古屋社長が退任したことで、実証実験の結果次第では、店舗ごとに営業時間を個別に設定する可能性も出てきたわけです。
一部の加盟店が24時間営業に耐えられなくなっているのは事実ですが、加盟店の経営が苦しいのは24時間営業だけが理由ではありません。狭いエリアに大量出店するという同社の出店方針が、市場の飽和によって徐々に機能しなくなっていることが大きく影響しています。
セブンの総店舗数は2万店舗を超えており、5年間で何と35%も増加しましたが、1店舗あたりの売上高は同じ期間でほぼ横ばいにとどまっています。この間、客単価は上昇しているので、店舗の中には来店者数が減ったところもあるでしょう。
ドミナント戦略はいよいよ限界に近づきつつある
セブンはコンビニ・チェーンの中でもドミナント戦略(同一エリアに大量出店する戦略)を得意としており、近いエリアに多数の店舗がひしめています。市場が拡大している時期は、ドミナント戦略は物流効率化や顧客のロイヤリティ向上に大きく寄与しましたが、同じエリアに店舗を出し過ぎれば、同一チェーン内で顧客の奪い合いとなるのは明白です。
すでにコンビニはこうした状況に陥っており、加盟店の売上高が伸びない状況となっています。加盟店の業績が拡大しなければ、当然のことながら利益も増えませんから、高騰する人件費をカバーできなくなります。
つまり24時間営業の最大の問題は、営業時間ではなく、加盟店の利益が伸びていないことなのです。
こうした根本的な課題を解決しないまま、営業時間の一部見直しを行っても、似たような問題が再度、発生する可能性が高いでしょう。市場が飽和状態にある以上、今後は何らかの形で店舗網をスリム化しないと、加盟店の経営問題は解決しないと考えた方が自然です。