経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

  1. ビジネス

「いきなり!ステーキ」はビジネスモデル特許で競合の参入を防けるか?

 大人気の立ち食いステーキ店「いきなり!ステーキ」の類似店が次々と現れています。いきなり!ステーキ側は、対応策のひとつとしてビジネスモデル特許による模倣の防止を掲げていますが、ビジネスモデル特許にはどれだけの効果があるのでしょうか。

類似の競合店が続々と市場に参入

 「いきなり!ステーキ」は、説明するまでもなく、立ち食い形式のステーキ専門店です。格安の値段でステーキが食べられると評判になり、一気に店舗網を拡大。現在では360店舗を超えるまでに成長しました。

 ところが最近になって、いきなり!ステーキの業態とよく似たステーキ専門店が次々と新規出店しています。いきなり!ステーキを真似る企業が続出しているということは、この業態にはまだまだ成長余地があることを示しており、必ずしもいきなり!ステーキにとって逆風とは限りません。同店を運営するペッパーフードサービスもむしろ類似業態の参入を歓迎しています。

 しかし、いくら競合を歓迎するといっても、同じようなお店がたくさん出てくると、何らかの影響が生じる可能性もあります。同社では、安易な類似店の参入を防ぐ方策のひとつとして、ビジネスモデル特許の取得を実施しています。

 同社は、ステーキを提供する仕組みや顧客管理に関する特許を取得しており、新規参入した競合企業がすべてを模倣できないようにしてました。
 例えば、2014年に特許出願した「ステーキの提供システム」では、顧客をテーブルに案内し、量を聞いて肉をカットし、テーブルに運ぶまでの一連のステップが特許の対象となっています。

ビジネスモデルは特許にならない?

 ビジネスモデル特許はその語感から、ビジネス上のアイデアそのものが特許になるとイメージしている人が多いのですが、これは正しい認識ではありません。特許というのは発明に対して与えられるもので、厳密にいうとビジネスモデルそのものは特許になりません。

 ビジネスモデルを特許にするためには、何らかの技術的な工夫が必要であり、その点においては従来の特許と大きく変わらないとみてよいでしょう。同社の特許も、肉の計量器やテーブル番号を管理するための札など、技術的な工夫がその対象となっています。

 同社が出願した特許については、2016年に第三者が特許庁に異議申し立てを行い、特許庁は一旦、特許を取り消す決定を行いましたが、同社は知的財産高等裁判所に特許取消決定の取り消し請求を実施。裁判所は2018年10月、同社の主張を認める判決を下したことから、同社のビジネスモデル特許は正式に認められることになりました。

 同社が特許を持っていることは、競合の抑制にはある程度、効果があると思われますが、あくまで技術的な工夫が対象ですから、模倣を完全に防ぐことは不可能です。特許に抵触しない形で、似たようなオペレーションを実現することはそれほど難しくないというのがその理由です。しかし、同社の特許取得が、競合にとってそれなりの脅威となるのは間違いありません。

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