国内のネットオークションサイトで、ウランと見られる物質を売りに出していた人物が、警察から事情聴取を受けています。海外のサイトで購入したものを再販売していたと考えられますが、これはどのくらい危険なことなのでしょうか。
海外のサイトから購入した可能性が高い
事件の全容は明らかになっていませんが、事情聴取を受けている男性は、海外のサイトでウランと見られる物質を購入し、国内のオークションサイトに出品していました。男性が出品していたのは「劣化ウラン」もしくは「イエローケーキ」の可能性が高いと思われます。
ウランには複数の同位体(同一の原子番号で中性子の数が異なる物質)がありますが、核燃料や核兵器において重要な役割を果たすのはウラン235という物質です。一方、ウラン238は放射性物質ではありますが、放射線のエネルギーが低く、核分裂も起こりにくいので比較的安全な物質です。
核燃料や核兵器を製造する際には、ウラン235の濃度を高める作業(濃縮)が行われますが、残った物質のことを一般的に「劣化ウラン」と呼びます。イエローケーキは、ウラン鉱石を精製する過程で出てくるウランを含んだ固形もしくは粉末状の物質です。色が黄色いのでイエローケーキと呼ばれます。
劣化ウランは工業的・軍事的にはほとんど利用価値がなく、ごく一部のケースを除いて廃棄されるケースが大半です(一部では、ウランが持つ圧倒的な重さを利用して、放射線の遮蔽や戦車の砲弾などに使われることがあります)。
イエローケーキは、その後の処理工程でウラン燃料に変わりますが、イエローケーキの状態で何かに利用されることはありません。しかし海外のサイトでは、こうした物質の一部が売られていることがあるようです。
それほど危険な物質ではないが、テロへの悪用リスクがある
日本の原子炉等規制法では、許可を受けた事業者以外が、核物質を譲渡することを禁止していますから、出品された物質が本物であれば、原子炉等規制法違反ということになるでしょう。
劣化ウランやイエローケーキは、放射線量が極めて小さいですから、仮に本物でも、飲み込んだりしなければ過度に危険視する必要はありません。
しかしながら、一部からは、テロへの悪用を懸念する声も出ているようです。
多くの人に科学的な知識はありませんから、仮にテロリストが、これらの物質を購入し、周辺にまき散らすと脅迫した場合、実際の危険度とは関係なく、パニックが起こる可能性は否定できないでしょう。