カルロス・ゴーン氏が仏ルノー会長を退任することになり、同社は新体制を発表しました。日産はこれまで株主総会の開催要求を頑なに拒否してきましたが、新体制が発足したことで、一転して総会の開催要求に応じることになりました。今後のルノー・日産の体制はどうなるのでしょうか。
日産は株主総会の開催を頑なに拒否してきた
フランスの自動車大手ルノーは2019年1月24日、会長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏が同職を退任し、会長にタイヤ大手ミシュランCEOのジャンドミニク・スナール氏、CEOにCOO(最高執行責任者)だったティエリー・ボロレ氏を充てる新体制を発表しました。
これまで日産は、ルノーが再三にわたって要求してきた株主総会の開催を拒否してきましたが、ゴーン氏の退任が決まると、一転して総会の開催に応じる方針を示しました。とりあえず日産の新しい取締役にはスナール氏が就任する可能性が高いでしょう。
しかし、今後の日産とルノーの体制をどうするのかについては、まったく先が見えていません。
新体制発表を受けて会見に臨んだ日産の西川廣人社長は、ルノーとの経営統合について「今はその議論をすべきではない」と述べ、ルノー主導での経営統合の議論は望まないというスタンスを明らかにしています。日産側の要望は現状維持ということですが、こうした消極的な姿勢は少なくとも、同社の将来にとってあまりプラスにはならないでしょう。
というのもフランス政府側が強く要望しているルノー主導の完全経営統合の是非はともかくとして、自動車産業が置かれた現状を考えた場合、ルノーと日産の統合を進めることは喫緊の課題だからです。
統合を進めないと生き残れない可能性が・・・
世界の自動車産業は100年に1度の大変革期を迎えており、上位グループに残っていない企業は存続が難しいと言われています。
現在、世界シェアのトップとなっているのは独フォルクスワーゲン(VW)で、2位はルノー・日産連合、3位はトヨタ自動車、4位はゼネラル・モーターズ(GM)です。5位以下は4位との差が大きいですから、上位4社に残っていることが生き残りの必須要件といえます。
4社の中でルノー・日産連合だけが一体の会社ではありませんが、近い将来、完全統合されることについて、市場はすでに織り込み済みです。逆に言うと、統合が進まない場合には、市場からの評価は大きく落ち込むことになるでしょう。もし日産が事実上、独立するような事態となれば、ルノー、日産ともに一気に下位グループに転落するというのが現実です。
ルノーの新体制が発足した今、もっとも優先すべきなのは、今後の経営方針を早急に固め、それに基づいてオペレーションを進めていくことです。こうした中において、強く現状維持を望む、日産経営陣のスタンスは、あまりにも消極的と言わざるを得ません。
日本では、かつて大手銀行が大型合併を行いましたが、出身銀行による派閥争いばかりを繰り返し、一部のメガバンクは一気に競争力を失ってしまいました。どちらが主導権を握るのかということにばかりこだわっていると、会社そのものの屋台骨を揺るがすことにもなりかねません。残された時間は少ないと考えるべきでしょう。
かつての日産は、経営陣と労働組合、そして社員が、仕事はそっちのけで派閥争いばかりを繰り返していました。その結果、会社は経営危機に陥り、外資であるルノーに救済される形となりました。こうした過去を忘れてはなりません。