日本の料理人がマカオのレストランに転職したところ、年収が4倍になったという話が話題となっています。アジア経済は急速に発展しており、日本は徐々に賃金が安い国となりつつあります。日本人がアジアに出稼ぎに行く日もそう遠くないでしょう。
アジアの賃金は想像以上に上がっている
国内で働いていた和食の料理人が、マカオのレストランに転職したところ、年収が4倍になったという話が大きな反響を呼んでいます。現地レストランでのポストは副料理長ということなので、能力が高い人の話ではありますが、それにしても4倍の待遇差というのは驚きです。
これにはマカオという地域の特殊事情が大きく影響しています。カジノのあるマカオは世界有数の裕福な地域となっており、2017年における1人あたりGDP(国内総生産)は7万7000ドル(約870万円)と日本の2倍以上もあります。
1人あたりのGDPは、その国の平均賃金と考えて差し支えありませんから、マカオでは平均的なビジネスマンが800万円以上の年収を稼ぐことは特に不思議なことではありません。
しかしながら、マカオのケースは極めて特殊なのかというと必ずしもそうではないことに留意する必要があります。マカオのお隣、香港の1人当たりGDPは4万6000ドル、シンガポールの1人あたりGDPは5万7000ドルといずれも日本より多く、圧倒的に豊かです。さらに驚くべきことに、中国の経済水準がこのところ急激に上昇しており、こうした地域に近づきつつあります。
このままでは日本人の生活がさらに苦しくなる
中国は国土が広く、内陸部には貧しい地域もありますから、全体の平均値はまだまだですが、上海や深センなど沿岸都市部におけるホワイトカラー層の収入は、マカオや香港、シンガポールに迫る勢いです。
これらの地域に行ってホテルのバーなどでビールを飲むと、ごく普通に1杯1000円以上取られますから、生活水準は相当高くなっていると考えるべきでしょう。
基本的に労働者の賃金は生産性に比例して上昇しますが、日本では経済全体が低迷していることに加え、先進諸国と比較して生産性が著しく低いという特徴があります。生産性が低い理由は「儲からないビジネスをしている」か「社員を過剰に抱えているか」のどちらかであることがほとんどです。
業務のムダを多少、見直したところで、上記の2つを改善しなければ、生産性は大きく上昇しません。
かつてソフトウェア業界では、人件費の安い中国に外注する動きが活発でしたが、今では、中国の会社が人件費の安い日本に仕事を外注するようになってきました。このままの状態を続けた場合、アジアの賃金が日本を追い越す可能性は十分にあるでしょう。
日本の賃金が大きく下がるということは、輸入品の価格が上昇し、私たちの生活がより苦しくなることを意味しています(一部には経済成長しなくてもよいという意見があるようですが、日本は貿易に依存している国であることは忘れてはいけません)。
確かに今の日本は居心地がよいのかもしれませんが、本当にこのままの状況でよいのか、私たちはもう一度、考え直してみる必要があるでしょう。