経済評論家 加谷珪一が分かりやすく経済について解説します

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店舗のライブ配信で窃盗激減というニュースをどう考えるか?

 ある弁当店が、売り場の様子をユーチューブでライブ配信したところ、窃盗(万引き)が減ったという話がネットで話題になっています。一部には、カメラが常に作動していることについて抵抗感を持つ人もいるようですが、ネット上の反応は総じて良好です。ネット時代ならではの、新しい店舗運営のモデルケースとなるかもしれません。

人が見ていないと犯罪に走る人が多い?

 東京都江東区にある弁当店では、店の様子をユーチューブでライブ配信しています。当初は来店を考えている人に在庫の状況を知らせることが目的だったそうですが、実際に配信を行ったところ、1日に3~4件あった窃盗が激減し、ほぼゼロになったとのことです。

 店側がこの実績をツイッターで投稿したところネット上では大きな話題となりました。

 一部からプライバシーについて懸念する声もあったようですが、店側は、ライブ配信していることを事前に告知しており、カメラに映りたくない人は店に行かないという選択肢があるので、問題はないと判断。実際、顧客からの評判も上々で、ネット上でも好感する意見が多いようです。

 日本社会は、秩序がしっかりしており犯罪が少ないと言われています。確かにそれは事実なのですが、相互監視を前提とした前近代的なムラ社会であることも大きく影響している可能性があります。

 逆に言えば、人が見ていなければ犯罪へのハードルが大きく下がるということであり、実際、この弁当店も、窃盗の被害に悩まされてきました。「万引き」という言葉の言い換えが存在していることを考えると、ホンネの部分では犯罪に対する意識が薄いという側面があるのかもしれません。

camera

社会全体で考えていくべきテーマ

 もしそうだとすると、あらかじめ告知した上でカメラでライブ配信するという手法は、かなりの効果を発揮する可能性があります。

 確かに一部の人は、あちこちで自分の姿が映し出されることについて、気持ちよく思わないかもしれません。しかし現実にはライブ配信こそされていないものの、多数の監視カメラが至るところに設置されているほか、スマホなどを通じて、かなりの個人情報が吸い上げられています。

 事前に告知されているのであれば、ライブ配信されていることは、それほど気にするレベルのことではなくなっているのかもしれません。

 もっともこうした映像インフラが普及し、これに顔認証システムが加わると、相当な部分まで人の行動を追跡できてしまいます。社会全体として公開映像をどう管理していくのか、議論を積み重ねていく必要があるでしょう。

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