加谷珪一の金利教室 第5回
前回は複利が持つ効果について解説しました。今回は、その考え方を株式投資に応用してみたいと思います。
日本株の平均リターンは6%
銀行預金や国債とは異なり、株式は完全なリスク資産ですから、単純に利回りだけで将来の資産額を算定することはできません。リスクによる上限変動を加味する必要があります。
過去50年間における株価のデータを分析すると、日本株は平均して約6%の利回りがあったことが分かっています。これはバブル期のような過剰な高騰や、その後の暴落などをすべて含んだ数字です。長期間で平均すると、6%のリターンが得られていたという意味になります。
前回、説明した毎年100万円を積み立てるケースに6%のリターンを当てはめてみると、結果は驚くべきものとなります。30年後の金額は何と8300万円を超え、億の単位が見えてきます。しかしながら、先にも述べたように、株式投資にはリスクというものがあり、確実に6%のリターンが保証されるわけではありません。
では実際にはどの程度の金額になるのでしょうか。
先ほど日本株は過去50年の平均で6%程度のリターンがあると説明しましたが、一方で、日本株の過去の平均的なリスクは±25%程度です。
一般的にリスクというのは危険性という意味で使われていますが、投資理論の世界ではちょっと違います。投資理論におけるリスクという概念は、1年間のうちに株価が上下に変動する幅のことを示しています。リスクが±25%ということは、統計学上の1σ(約68%)の確率で株価は上下25%の範囲内に収まるという意味になります。
30年の時間をかければ億が見えてくる
要するに、株価は毎年平均6%上昇するものの、一方で、毎年25%のブレが生じる可能性があるというわけです。上にブレれば、期待収益よりもさらに大きな金額になり、下にブレれば、期待収益を下回るります。
投資した時期によって上ブレが続くこともありますし、下ブレが続くかもしれません。投資する期間が長ければ長いほど、こうした株価のブレを回避することができるので、平均的なリターンに近づいていくわけです。
最終的に金額がどのようになるのかを手で計算するのは大変ですので、パソコンを使ってシミュレーションしてみました。
結果は、6%の利回りで単純計算を行った時の金額である8400万円を超える確率は30%、貯蓄のみの金額である3000万を超える確率は70%でした。一方で、3000万円を下回ってしまう(つまり元本割れ)する確率も30%です。
整理すると、約3分の1が損をして、3分の1は億近い資産を形成、残りの3分1は想定通りの儲けになるという図式です。リスクはありますが、70%の確率で損せずに済み、場合によっては億の資産の手が届くということであれば、株式投資について前向きに検討する価値はありそうです。